―あなたsideー
「どうか……俺を頼りにして欲しい。」
義勇さんは、
私にそう言ってくれた。
嬉しかった。
そのひと言のお陰で
私が今までずっと…
"探してた何か"が、
"足りなかった何か"が…
見つかった気がした。
此処に来て私は
久しぶりに人の優しさに触れた。
……炭治郎と禰豆子ちゃんと…
暮らしたとき以来だろうか……?
義勇さんとお館様のお陰で、
私の心は満たされた。
そしたら……
自然と笑みが溢れてきて……
感謝を伝えずにはいられなかった。
私はちゃんと
義勇さんに感謝の気持ちを今、
伝えられているだろうか。
普段あまり多くの事を話さないから…
ちゃんと話せているか不安だ。
……でも、
それでも……
私はちゃんと、
義勇さんにこの感謝の気持ちを
伝えなければ。
「ありがとう」って、
義勇さんに笑顔を向けたい。
うまく、笑えているだろうか。
今まであまり笑わなかったから…
あまり、
笑うことが無かったから……
ちょっと不安だ。
そう言ったあと、
義勇さんは少し微笑んだ。
初めて見た、
義勇さんの笑顔。
ああ、
そうだ……
私は……
"これ"を探してたんだ…。
私は……
"仲間"と呼べる人達と…………
笑い合いたかったんだ。
蟲柱様からの手紙……。
何が……
書いてあるのだろう……。
私は鴉の足から手紙を外し、
手紙をひらいた。
そこには
こう書かれていた。
「常闇あなた様
炎柱である煉獄さんをあなたさんが救ったと、
その場にいた隊士から聞きました。
聞くところ、
煉獄さんが圧倒される程の強さを持つ
上弦の参を相手に、
圧倒的強さだったとか。
さすがですね。
煉獄さんを助けてくれた事、
柱一同、感謝を申し上げます。
本当に、ありがとうございました。
こんな私があなたさんに頼み事とは
随分とおこがましいですが、
どうか…聞いては頂けないでしょうか?
蝶屋敷にいらしてください。
改めて、お礼を言いたいです。
煉獄さんにも、会いに来てください。
いつになっても構いません。
私は、
待っています。
胡蝶しのぶ」
そう言って私は、
義勇さんに手紙を渡す。
義勇さんは驚きの顔を見せながら
手紙を読んだ。
どうしよう…。
行ったほうが、
いいのだろうか……?
行ったらきっと私は……
大切なものが増えてしまうから……。
失うものが…
増えてしまうから………。
苦しみが……
倍になるから…………。
だから…………
行かない方が…
いいのか…………?
いや、
違う。
それじゃあ、
今までと同じじゃないか。
苦しみから逃げ回って、
死ぬ準備を進めてきた私と…
同じじゃないか。
もう私は、
今までの自分じゃない。
新しい、
"常闇あなた"だ。
"常闇あなた"は、
今自分がするべき事を知っている。
本当は……
"失う"よりも、
"大切にできないまま"の方が…
何倍も苦しい。
だから私は……
"大切にしたい"
"仲間"と呼べる人達と……
笑い合いたい。
、
太陽は、気付く。
"失う"よりも…
"大切にできないまま"の方が……
何倍も苦しい事に。
そして、
"仲間"と呼べる人達を
照らしたいと、
決心するのである。
きっと明日は……
"快晴"。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。