ー炭治郎sideー
あなたはそう言って歩き始めた。
あなたは歩くのが速くて、
気付いたら見失いそうになっていた。
俺は慌てて禰豆子の手を引いて、あなたの後を追った。
俺は着いて行くのに必死だったし、
あなたはずっと無言だったから
ずっと無言な空間が続いた。
あなたが気付いてくれたのか、
歩く速さを落としてくれた。
それから俺はあなたの隣に並んで歩いた。
そのときに気づいた……。
あなたから…
匂いがしない……。
今考えてみると、
あなたの気配もしなかった。
あなたは…
意図的に気配だけでなく匂いまで消せるのだろうか……?
きっとこれも…
お館様があなたを探している理由のひとつだろう…。
あなたの事は本当に……
わからないことが多い。
俺は……
あなたから月柱からされていた事の話を聞いた時、
あなたの事を分かったつもりでいた…。
でも本当は…………
何も知らなかった…。
今だって、
あなたがどんな気持ちで俺を助けてくれたのかも……
どんな気持ちで鬼殺隊を抜けて、この山に来たのかも…
俺には…わからない……。
あなたがそう言って、
俺のほうを見た。
俺は当たりを見渡した…。
あたりは花に囲まれていて…
花々が咲き乱れていた。
俺は狩人の言っていたことを思い出した。
『最近、あの山の頂上付近に新しい屋敷が出来た』
『花が咲き乱れている場所』
そう言ってあなたは、
禰豆子に笑いかけた。
その時の笑顔は……
とても綺麗だった…。
いままで笑わなかったのが勿体ない位に…………。
禰豆子がとても喜んでいる。
そうか、
禰豆子は覚えていたんだな。
あの時……
ナタグモヤマで…
下弦の伍から
あなたが助けてくれた事を……。
俺は…
あなたを鬼殺隊に連れて帰らなければ行けない。
わかってる。
わかってる……。
でも…
この一瞬で、
邪魔したくないと思ってしまった…。
鬼殺隊にいた時は一度も笑わなかったあなたが……
笑える場所を奪いたくないと思ってしまった…。
強く…そう思ってしまった。
そして……
願わずにはいられなかった…。
あなたが笑い続けられる未来が訪れる事を……。
俺は……
どうしたらいい…?
、
一人の少年は知った。
"太陽の今"を……。
そして……
少年は照らされた…。
そして心を揺さぶられた……。
少年の心は揺れに揺れた。
本当に太陽を……
この地から連れ出していいのかと……。
太陽はこの地を離れても…
笑い続けられるのかと………。
太陽は……
誰を照らしたいのかと……。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。