第15話

太陽は、今。
10,220
2020/01/12 12:06






ー炭治郎sideー




常闇 あなた
…炭治郎。
任務は完了したんでしょ?
……早く、帰ったほうがいい。
…………鬼殺隊の人達が待ってる。
竈門炭治郎
……あなた。
俺達が待ってるのはあなただ。

なぁ、あなた。
もう一度、
戻って来てはくれないか?
常闇 あなた
……ごめん、炭治郎。

私は、もう決めたんだ。
戻らないって……。
竈門炭治郎
あなた……。
常闇 あなた
炭治郎……
もう真っ暗になってる。

早く、帰らないと……
帰れなくなる…。
竈門炭治郎
あなた、
俺は帰らない。

あなたが…
鬼殺隊に戻ると言ってくれるまで。
常闇 あなた
私はもう決めたと言っ…
竈門炭治郎
確かにあなたはそういった。

でも俺は帰らない。
俺達には…あなたが必要だから。
常闇 あなた
…………
常闇 あなた
…着いて来て。


あなたはそう言って歩き始めた。


あなたは歩くのが速くて、
気付いたら見失いそうになっていた。


俺は慌てて禰豆子の手を引いて、あなたの後を追った。








俺は着いて行くのに必死だったし、


あなたはずっと無言だったから


ずっと無言な空間が続いた。






あなたが気付いてくれたのか、


歩く速さを落としてくれた。


それから俺はあなたの隣に並んで歩いた。


そのときに気づいた……。


あなたから…


匂いがしない……。


今考えてみると、


あなたの気配もしなかった。


あなたは…


意図的に気配だけでなく匂いまで消せるのだろうか……?


きっとこれも…


お館様があなたを探している理由のひとつだろう…。


あなたの事は本当に……


わからないことが多い。


俺は……


あなたから月柱からされていた事の話を聞いた時、


あなたの事を分かったつもりでいた…。


でも本当は…………


何も知らなかった…。


今だって、


あなたがどんな気持ちで俺を助けてくれたのかも……


どんな気持ちで鬼殺隊を抜けて、この山に来たのかも…


俺には…わからない……。


常闇 あなた
着いたよ、炭治郎。

あなたがそう言って、


俺のほうを見た。


俺は当たりを見渡した…。


竈門炭治郎
こっ、ここは……っ!!



あたりは花に囲まれていて…


花々が咲き乱れていた。


俺は狩人の言っていたことを思い出した。



『最近、あの山の頂上付近に新しい屋敷が出来た』






『花が咲き乱れている場所』





竈門炭治郎
狩人の人が言ってた屋敷は……

やっぱり、あなたの屋敷だったのか……。
常闇 あなた
…あの日から、
……鬼殺隊を抜けた日から…
この屋敷に住んでいるんだ。

村の人達はとても優しい人達ばかりで……
だから私は、ここにいる人達を守っている。
竈門炭治郎
あなた……
常闇 あなた
……炭治郎、ここに居るといい。
どうせ私しか居ないし、
それに、炭治郎は帰らないんでしょ?
竈門炭治郎
…ああ、そうさせて貰うよ。
常闇 あなた
…禰豆子ちゃんも、よろしくね。


そう言ってあなたは、

禰豆子に笑いかけた。


その時の笑顔は……

とても綺麗だった…。


いままで笑わなかったのが勿体ない位に…………。


竈門禰豆子
むー!ニコッ
常闇 あなた
可愛いね、禰豆子ちゃん。
竈門禰豆子
むー!むー!ニコッ



禰豆子がとても喜んでいる。


そうか、


禰豆子は覚えていたんだな。


あの時……


ナタグモヤマで…


下弦の伍から


あなたが助けてくれた事を……。


常闇 あなた
……炭治郎?

どうかしたの……?
竈門炭治郎
…いいや、何でもないよ。笑
竈門炭治郎
良かったな、禰豆子。
竈門禰豆子
むーむー!!ニコニコ














俺は…


あなたを鬼殺隊に連れて帰らなければ行けない。


わかってる。


わかってる……。

















でも…


この一瞬で、


邪魔したくないと思ってしまった…。


鬼殺隊にいた時は一度も笑わなかったあなたが……


笑える場所を奪いたくないと思ってしまった…。


強く…そう思ってしまった。


そして……


願わずにはいられなかった…。


あなたが笑い続けられる未来が訪れる事を……。


俺は……


























どうしたらいい…?































一人の少年は知った。


"太陽の今"を……。


そして……


少年は照らされた…。


そして心を揺さぶられた……。


少年の心は揺れに揺れた。


本当に太陽を……


















この地から連れ出していいのかと……。
















太陽はこの地を離れても…


笑い続けられるのかと………。















太陽は……


誰を照らしたいのかと……。




















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