第27話

照らし続ける場所。
7,909
2020/02/18 12:47



ーあなたsideー





胡蝶しのぶ
待ってました……
胡蝶しのぶ
あなたさん
常闇 あなた
蟲柱様…
胡蝶しのぶ
蟲柱様だなんて…
名前で呼んで下さい。
遠慮は要りません。
常闇 あなた
胡蝶さん……
胡蝶しのぶ
あら、冨岡さん。
ちょうどよかった。
今から柱の皆さんを集める所だったんですよ。
冨岡義勇
…そうか。
何の為に……?
胡蝶しのぶ
……話し合い、したいんです。
柱の皆さんもきっと……
そう思っていらっしゃると思ったので…
常闇 あなた
……
胡蝶しのぶ
取り敢えず中へお入りください。









…………





初めて蝶屋敷に入った。




私は怪我をしても治るから、




行く事が無かった。




綺麗に掃除された広い屋敷。




忙しそうに人がバタバタと働いている。




一言も喋らずに私と義勇さんは




胡蝶さんの後ろについて歩く。




だんだんと聞こえる音が静かになり、




忙しそうに働く人も減っていく。




屋敷のかなり奥まで来た所で




胡蝶さんは足を止めた。








胡蝶しのぶ
…ここの部屋で、少しお話をしましょう。
常闇 あなた
……はい、



カタッ……





胡蝶さんは静かに襖を開けた。




するとそこには……






























宇髄天元
よぉ、胡蝶。
鴉からの伝言、ありがとな。
伊黒小芭内
胡蝶のおかげで…
ちゃんと、話し合えそうだ。
胡蝶しのぶ
もういらしてたのですか…?
随分はやいですね。
甘露寺蜜璃
ええ!
はやく行かなきゃと思ってつい気合がはいっちゃって!
悲鳴嶼行冥
勝手に屋敷へ入ってすまない…
胡蝶しのぶ
いえ、何も問題ありません。
時透無一郎
あなた……
常闇 あなた
……
不死川実弥
……煉獄は?
胡蝶しのぶ
まだ……目を覚ましていません。
先程手当てがやっと完了したところです。
胡蝶しのぶ
……煉獄さん以外の柱は揃ったみたいですね。
悲鳴嶼行冥
あなた……
煉獄を救ってくれた事、
心より感謝する。
常闇 あなた
……いえ、
私は何も……
胡蝶しのぶ
……冨岡さんはもう、あなたさんと話し合ったみたいですね…。
冨岡義勇
…ああ。
常闇 あなた
…えっと……あの……
甘露寺蜜璃
あなたちゃん、最初に……
私達の話から聞いて貰えないかしら……?
常闇 あなた
……わかりました。
甘露寺蜜璃
ありがとう
甘露寺蜜璃
…さっき、悲鳴嶼さんが言ったけど……煉獄さんを助けてくれてありがとう。
煉獄さんは…私の恩人なの。
だから本当に……感謝の気持ちでいっぱいだわ。
常闇 あなた
……私は…間に合わなかった。
……炎柱様の左眼は…もう、戻ることは無いんです。
あんなにも…高い闘気をもっていて……
強い志をもつ剣士を私は……救えなかった。
命があっても……剣士として、
護る者として生きていた炎柱様にとっては………
とても、生きづらい人生を歩ませてしまう……。
常闇 あなた
だから私に………
お礼だなんて…必要ないです。
時透無一郎
……それは違うんじゃない?
宇髄天元
ああ、時透の言う通りだ。
お前が助けてなかったんなら、
誰が煉獄を救ったんだよ。
宇髄天元
なんで、煉獄は生きてるんだよ。
上弦の参と一人で戦って、
失うものがどうして左眼だけで済んだんだよ。
伊黒小芭内
……お前が救ったからだろ、あなた。
煉獄を救ったのは……
あなた。
お前の他に、誰がいるっていうんだ。
時透無一郎
……あなたしかいないでしょ?
煉獄さんを救った人は。
常闇 あなた
……ありがとう、ございます…
甘露寺蜜璃
あなたちゃんは私達柱を助けてくれたのに……
……私達は、あなたちゃんに本当に申し訳ない事をしたわ…。
謝って許される事じゃないけど……
あなたちゃんは…謝罪なんか必要ないって言ったけど……
けどやっぱり私達、
ちゃんとあなたに謝りたいの…。
不死川実弥
本当に…柱として情けねぇ事をした……。
すまねぇ……。
宇髄天元
すまん…
伊黒小芭内
すまなかった…
時透無一郎
ごめん…
胡蝶しのぶ
本当に申し訳ないです……。
ごめんなさい……。
悲鳴嶼行冥
すまなかった…
甘露寺蜜璃
本当に…ごめんなさい……。
甘露寺蜜璃
柱なら、気付けて当然よね…。
私達…同じ柱として……
仲間だと思ってたから……
月詠麗奈ちゃんの事…全然疑わなかったの……。
苦しみに気づけなくて……
ごめんなさい……。
胡蝶しのぶ
私達も、もっと……
冨岡さんのように、
柱として日常的に注意して周りを見ていたら……
気づけたかもしれないのに……
本当に…ごめんなさい……。
常闇 あなた
……いいんです。
もう、"月詠麗奈"はこの世に居ない……。
だから……
誰も、悪くないんです……。
常闇 あなた
それに……
月詠麗奈から言われて"悪役"を演じたのは……
私自身です。
私自身に……責任があります。
甘露寺蜜璃
そんな事ないわ…
常闇 あなた
……本当です。
私は……"特殊な血"を持って、
"選ばれし剣士"としてうまれた事を知ったとき……
とてつもない疎外感と孤独に包まれたんです…。
そして、既にそのときには……
私の家族は死んでいた……。
それからは……
全てがどうでもよかった……。
常闇 あなた
罵倒されようが、
殴られようが…
何をされても何も感じなかった……。
常闇 あなた
家族を護る為に月詠麗奈に従っていたのに……
家族を護る為に刃を振るっていたのに……
その家族さえ護れなかった……。
常闇 あなた
私に残ったのは……
この眩く輝く…刀だけだった…。
常闇 あなた
家族を護っていると思い込まないと…
やっていけなかった……。
私は……
家族を護れなかった……。
だから……
せめてもの罪滅ぼしだと思って…
私は月詠麗奈に従い続けた……。
月詠麗奈を"善人"に仕立て上げ、
私が"悪役"となるのに…
手を貸した。
胡蝶しのぶ
あなたさん……
常闇 あなた
だから……
皆さんは悪くないです…。
常闇 あなた
むしろ、感謝しています…。
私の……
せめてもの罪滅ぼしに付き合ってくれて……
ありがとうございました…。
甘露寺蜜璃
あなたちゃん……
時透無一郎
あなた……
常闇 あなた
……私、皆さんと一緒に居るのが嫌で…
山に隠れて暮らし、
あのとき一緒に…山を下りなかった訳じゃないんです。
常闇 あなた
私はずっと……
怖かったんです…。
常闇 あなた
もう一度……
大切なものを失うのが…怖かった……。
その苦しみに、耐えられる自信がなかった……。
常闇 あなた
皆さんを……
大切に思ってしまうのが…
凄く…怖かった……。
宇髄天元
あなた……
常闇 あなた
私はずっと…
逃げてたんです。
正しく死ねる方法を探して…
ずっと、自分の死を正当化できる死に方で…
死のうと思っていました……。
常闇 あなた
でも……
間違いに気付きました。
常闇 あなた
お館様と義勇さんに……
気付かされました。
常闇 あなた
本当は、失うより……
常闇 あなた
大切にできないままの方が…
何倍も苦しいという事に……
気付いたんです……。
常闇 あなた
もう、
"後戻りはできない"けれど…
常闇 あなた
私は…
常闇 あなた
私は………






自然と、涙が溢れてくる。




以前は…




こんな事、




絶対になかった……。




これも全部、




私がこれから大切にしたい人達のお陰…。




私は涙を流しながら…




感情のままに話を続けた。





常闇 あなた
私は…
"此処"に居たいです。
常闇 あなた
皆さんを……
大切にしたい。
常闇 あなた
今度こそは……
ちゃんと、守り抜いてみせる…
常闇 あなた
だから……
常闇 あなた
だから…………





































.
常闇 あなた
どうか、
私が"使命を果たす"
そのときまで……
一緒に居て、
大切にさせてください……。























太陽が…




"照らし続ける場所。"





そこは…




酷く暖かく、




優しさに包まれる場所……。







"此処"の夜のとばりは……




消え去るだろう…………。









再び"此処"が




夜の闇に包まれたのなら………









"その出来事"は…




何を意味するのだろう……。






太陽が"己の使命を全うしたとき"、




訪れるのは…_________?







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