ーあなたsideー
待ってました……
あなたさん
蟲柱様…
蟲柱様だなんて…
名前で呼んで下さい。
遠慮は要りません。
胡蝶さん……
あら、冨岡さん。
ちょうどよかった。
今から柱の皆さんを集める所だったんですよ。
…そうか。
何の為に……?
……話し合い、したいんです。
柱の皆さんもきっと……
そう思っていらっしゃると思ったので…
……
取り敢えず中へお入りください。
…………
初めて蝶屋敷に入った。
私は怪我をしても治るから、
行く事が無かった。
綺麗に掃除された広い屋敷。
忙しそうに人がバタバタと働いている。
一言も喋らずに私と義勇さんは
胡蝶さんの後ろについて歩く。
だんだんと聞こえる音が静かになり、
忙しそうに働く人も減っていく。
屋敷のかなり奥まで来た所で
胡蝶さんは足を止めた。
…ここの部屋で、少しお話をしましょう。
……はい、
カタッ……
胡蝶さんは静かに襖を開けた。
するとそこには……
よぉ、胡蝶。
鴉からの伝言、ありがとな。
胡蝶のおかげで…
ちゃんと、話し合えそうだ。
もういらしてたのですか…?
随分はやいですね。
ええ!
はやく行かなきゃと思ってつい気合がはいっちゃって!
勝手に屋敷へ入ってすまない…
いえ、何も問題ありません。
あなた……
……
……煉獄は?
まだ……目を覚ましていません。
先程手当てがやっと完了したところです。
……煉獄さん以外の柱は揃ったみたいですね。
あなた……
煉獄を救ってくれた事、
心より感謝する。
……いえ、
私は何も……
……冨岡さんはもう、あなたさんと話し合ったみたいですね…。
…ああ。
…えっと……あの……
あなたちゃん、最初に……
私達の話から聞いて貰えないかしら……?
……わかりました。
ありがとう
…さっき、悲鳴嶼さんが言ったけど……煉獄さんを助けてくれてありがとう。
煉獄さんは…私の恩人なの。
だから本当に……感謝の気持ちでいっぱいだわ。
……私は…間に合わなかった。
……炎柱様の左眼は…もう、戻ることは無いんです。
あんなにも…高い闘気をもっていて……
強い志をもつ剣士を私は……救えなかった。
命があっても……剣士として、
護る者として生きていた炎柱様にとっては………
とても、生きづらい人生を歩ませてしまう……。
だから私に………
お礼だなんて…必要ないです。
……それは違うんじゃない?
ああ、時透の言う通りだ。
お前が助けてなかったんなら、
誰が煉獄を救ったんだよ。
なんで、煉獄は生きてるんだよ。
上弦の参と一人で戦って、
失うものがどうして左眼だけで済んだんだよ。
……お前が救ったからだろ、あなた。
煉獄を救ったのは……
あなた。
お前の他に、誰がいるっていうんだ。
……あなたしかいないでしょ?
煉獄さんを救った人は。
……ありがとう、ございます…
あなたちゃんは私達柱を助けてくれたのに……
……私達は、あなたちゃんに本当に申し訳ない事をしたわ…。
謝って許される事じゃないけど……
あなたちゃんは…謝罪なんか必要ないって言ったけど……
けどやっぱり私達、
ちゃんとあなたに謝りたいの…。
本当に…柱として情けねぇ事をした……。
すまねぇ……。
すまん…
すまなかった…
ごめん…
本当に申し訳ないです……。
ごめんなさい……。
すまなかった…
本当に…ごめんなさい……。
柱なら、気付けて当然よね…。
私達…同じ柱として……
仲間だと思ってたから……
月詠麗奈ちゃんの事…全然疑わなかったの……。
苦しみに気づけなくて……
ごめんなさい……。
私達も、もっと……
冨岡さんのように、
柱として日常的に注意して周りを見ていたら……
気づけたかもしれないのに……
本当に…ごめんなさい……。
……いいんです。
もう、"月詠麗奈"はこの世に居ない……。
だから……
誰も、悪くないんです……。
それに……
月詠麗奈から言われて"悪役"を演じたのは……
私自身です。
私自身に……責任があります。
そんな事ないわ…
……本当です。
私は……"特殊な血"を持って、
"選ばれし剣士"としてうまれた事を知ったとき……
とてつもない疎外感と孤独に包まれたんです…。
そして、既にそのときには……
私の家族は死んでいた……。
それからは……
全てがどうでもよかった……。
罵倒されようが、
殴られようが…
何をされても何も感じなかった……。
家族を護る為に月詠麗奈に従っていたのに……
家族を護る為に刃を振るっていたのに……
その家族さえ護れなかった……。
私に残ったのは……
この眩く輝く…刀だけだった…。
家族を護っていると思い込まないと…
やっていけなかった……。
私は……
家族を護れなかった……。
だから……
せめてもの罪滅ぼしだと思って…
私は月詠麗奈に従い続けた……。
月詠麗奈を"善人"に仕立て上げ、
私が"悪役"となるのに…
手を貸した。
あなたさん……
だから……
皆さんは悪くないです…。
むしろ、感謝しています…。
私の……
せめてもの罪滅ぼしに付き合ってくれて……
ありがとうございました…。
あなたちゃん……
あなた……
……私、皆さんと一緒に居るのが嫌で…
山に隠れて暮らし、
あのとき一緒に…山を下りなかった訳じゃないんです。
私はずっと……
怖かったんです…。
もう一度……
大切なものを失うのが…怖かった……。
その苦しみに、耐えられる自信がなかった……。
皆さんを……
大切に思ってしまうのが…
凄く…怖かった……。
あなた……
私はずっと…
逃げてたんです。
正しく死ねる方法を探して…
ずっと、自分の死を正当化できる死に方で…
死のうと思っていました……。
でも……
間違いに気付きました。
お館様と義勇さんに……
気付かされました。
本当は、失うより……
大切にできないままの方が…
何倍も苦しいという事に……
気付いたんです……。
もう、
"後戻りはできない"けれど…
私は…
私は………
自然と、涙が溢れてくる。
以前は…
こんな事、
絶対になかった……。
これも全部、
私がこれから大切にしたい人達のお陰…。
私は涙を流しながら…
感情のままに話を続けた。
私は…
"此処"に居たいです。
皆さんを……
大切にしたい。
今度こそは……
ちゃんと、守り抜いてみせる…
だから……
だから…………
.
どうか、
私が"使命を果たす"
そのときまで……
一緒に居て、
大切にさせてください……。
、
太陽が…
"照らし続ける場所。"
そこは…
酷く暖かく、
優しさに包まれる場所……。
"此処"の夜の帳は……
消え去るだろう…………。
再び"此処"が
夜の闇に包まれたのなら………
"その出来事"は…
何を意味するのだろう……。
太陽が"己の使命を全うしたとき"、
訪れるのは…_________?
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next ⇢ 儚い華、満開に咲く。
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