第5話

ナイスガイ、逃げる。
60
2022/10/21 14:10


私たちの前に掛かっている大きな布。
これに彼の様子が表示されている。



それを私とピレーで、見ているのですが……。


神
うーん。
ピレー
ピレー
いかがなされましたか?
神
彼ですが、やっぱり大丈夫かなぁって思いましてね。


本来転生する者は、以前の記憶は失われる。
たが今回の彼は違う。

基本的な転生ではなく、彼の中に一部の記憶は引き継いでいるという特殊な状況なのだ。


ピレー
ピレー
神様を蔑ろにする輩ですからね。
少し痛い目を見たほうが良いのです。
神
なかなかの過激発言ですね、ピレー。
ピレー
ピレー
私はアイツが嫌いです。
神
悪い人ではないんですよ?
ピレー
ピレー
知りません。


やれやれ。
ピレーは頑固ですね……。


ピレー
ピレー
おや?
あの男、人間の子供に見つかっていますよ?


人間の男の子ですね。
8歳くらいでしょうか。

神
驚くでしょうね。
言葉も通用しないのですから。
ピレー
ピレー
猫と人間とでは言語が違いますからね。
人間にしてみれば猫から何を言われようと、
おおよそニャンニャン言ってるようにしか聞こえないでしょうね。


そこなのだ。
そのあたりを説明しておきたかったのだが、
彼ったら、人の話も聞かずに勝手に目覚めちゃうんですから。

その目覚めはただ寝ている状態から起きたのではなく、猫への転生を完了させた事実を決定づけるものだったのに。

神
まぁ、自業自得ですかね。
ピレー
ピレー
そうです。
あんな男、苦労すれば良いのです。


とにかく、もう少し状況を静観してみましょう。


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― ナイスガイの視点 ―


黒猫
黒猫
くそう。
なんだって俺様が、小僧に遅れを取らねばならんのだ。

体格差でコレばかりはどうにもならん。
ナイスガイである俺様が即逃げというすばやい判断を下さなければ、即アウトだったろう。

通りがかりの子ども
通りがかりの子ども
######、##?
黒猫
黒猫
なに言ってんのか、さっぱりワカランな……。

おそらく俺様に何かを訴えているのだろうが……。
こうにも意思の疎通が取れんと、身の危険しか感じないぞ。

黒猫
黒猫
サラバだ。

今来た道を走って戻る。
軽く走ってみたら……。

黒猫
黒猫
物凄い速度が出るな。
軽く走っただけで、時速20kmは超えてそうだ。


四つ足歩行って不便そうなイメージだったが、これはヤベエな。
乗り物いらずだ。


黒猫
黒猫
よし、まいたか。

5分くらい走っただけだが、
さすがにこの速度では子供には追いつけないだろう。


黒猫
黒猫
この辺の人間とは会話不能なのか、
あの小僧が特例なのか、調べる必要がありそうだな。


やむを得ん。また散策せねばなるまい。




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