私たちの前に掛かっている大きな布。
これに彼の様子が表示されている。
それを私とピレーで、見ているのですが……。
本来転生する者は、以前の記憶は失われる。
たが今回の彼は違う。
基本的な転生ではなく、彼の中に一部の記憶は引き継いでいるという特殊な状況なのだ。
やれやれ。
ピレーは頑固ですね……。
人間の男の子ですね。
8歳くらいでしょうか。
そこなのだ。
そのあたりを説明しておきたかったのだが、
彼ったら、人の話も聞かずに勝手に目覚めちゃうんですから。
その目覚めはただ寝ている状態から起きたのではなく、猫への転生を完了させた事実を決定づけるものだったのに。
とにかく、もう少し状況を静観してみましょう。
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― ナイスガイの視点 ―
体格差でコレばかりはどうにもならん。
ナイスガイである俺様が即逃げというすばやい判断を下さなければ、即アウトだったろう。
おそらく俺様に何かを訴えているのだろうが……。
こうにも意思の疎通が取れんと、身の危険しか感じないぞ。
今来た道を走って戻る。
軽く走ってみたら……。
四つ足歩行って不便そうなイメージだったが、これはヤベエな。
乗り物いらずだ。
5分くらい走っただけだが、
さすがにこの速度では子供には追いつけないだろう。
やむを得ん。また散策せねばなるまい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。