第18話

『数年ぶりの町1』
2,660
2021/09/19 09:39
※前回の話は関係ありません


▶ 炭治郎



俺たち鬼殺隊は、遂に鬼を滅することが出来た。



しかし、それと引き換えにたくさんのものを失った。



大切な仲間も、腕も、目も。



あの夜 俺がもっと早く帰っていたら。



あの時 俺がもっと動けていたら。



過去には戻れないと分かっているのに、



終わったことばかり考えてしまう俺がいる。









「人がいっぱいだな!」



伊之助が笑顔で言う。



最後の戦いからだいぶ休んで、善逸や伊之助と一緒に俺と禰豆子の故郷である町にやってきた。



もう日が暮れそうだ。



「.......結構変わったね、お兄ちゃん」



「そうだな.....。あの日から数年も経ってるから.....」



町の入口でそんな会話をしていると、ガチャンと皿の割れる音がした。



「も、もしかして、た、炭治郎!? 禰豆子!?」












それからは涙の再会の嵐だった。



一番初めに気づいてくれた簪屋の女性が、大きな声でみんなに伝えてくれたからだ。



立ち話もなんだから、と、一番大きな家に、特に仲の良かった人と集まることに。



「炭治郎と禰豆子と.......わっ!猪!?」



女性が驚くと、伊之助は怒った口調で吐き捨てた。



「あ?俺は嘴平伊之助だ!」



「伊之助は昔自分を育ててくれた猪の被り物を被っているんだ。素顔は可愛いよ」



炭治郎は伊之助に怒られないようにコソッと告げた。



「そうなのかっ。ほら、ご飯ご馳走するよ」



この定食屋のご飯はどれも美味しく人気がある。



「わぁ、ありがとう!」



「いっただっきまーす! この煮物おいし〜♡」



禰豆子がお礼を言ったつかの間、もう食べ始める善逸。



「だろう?秘伝の出汁を使っているからね」



定食屋は少し呆れながらも得意げにしている。



「見たことねぇ食べ物だ!俺も食べる!」



そう言って、被り物を脱ぐ伊之助。



町の人達は目を丸くした。



「えっ、女の子.......?」



「ああ“?!ちげーよ!!」



少し顔を赤くして言う男性に、再び怒った口調で吐き捨てた。








食べ始めてから少しして、見覚えのある人が息を切らしながらやって来た。



「.......!三郎爺さん!」



炭治郎が叫ぶ。



「...た、炭治郎.......禰豆子......」



「久しぶりだねぇ〜」



2人が感動の再会を果たす中、禰豆子だけは呑気にしている。



「無事で良かった.......」



「うん、ただいま」



最後に会ったのが三郎爺さんだった。



元気そうで良かった.....。



炭治郎がそんなことを考えていたら肘があたってお茶をこぼしてしまった。



「ッ!あつッ!」



「いぃぃやぁぁぁあ!!炭治郎 大丈夫!?」



独特な悲鳴で心配しているのは、もちろん善逸。



「服を貸すから一旦脱げ。火傷してたら大変だ」



「ありがとう......」



片腕だと本当に不便だな、と思いつつ上の服を脱いでいく。



「ちょっと家に戻って服 取ってくる」



「ダメよ外に出たら!夜は鬼が出るのよ?」



町の人同士でそんな会話をしている。



鬼、か.........。



「ううん、大丈夫。鬼はもういないよ」



炭治郎は切なく笑って、そう言った。




……To be continued

プリ小説オーディオドラマ