第24話

レストラン
7,580
2020/06/06 04:48
日が沈み始め、腹も空いてきたという事で。
実弥が晩飯を食いに行く…と、また行き先を言わずに歩き始める。

暫く歩いて着いた場所は、今凄く美味しいと話題になっているレストランだった。

人気故に、席に着けるのには相当な時間並ばなければならない。
案の定、店の前は人が沢山並んでおり、1、2時間は掛かる事が容易に分かる。
……けれども実弥は、その列を無視しそのまま店に入っていってしまった。
あなた

は、ちょ、実弥……

慌てて呼び止めようとしたその刹那。

店員の声が響いて、
店員
御予約の不死川様ですね。こちらの席へどうぞ。
あなた

……あ、え?

不死川実弥
不死川実弥
何ボケっとしてんだァ。……ほら、行くぞ
そう言っては口の片端を上げ、笑った実弥。
ひーちゃんはキラキラした店の雰囲気に夢中のようだ。

そうして私達は、案内された席へと腰を下ろす。
あなた

さ、さ実弥!! よ、予約ってッッ…

不死川実弥
不死川実弥
……あァ、お前この前…行きてぇとか言ってなかったかァ?
言った。


確かに此処は、私が行きたいと言っためちゃくちゃ美味しいと噂のレストランだ。

……ただ、ポツリと言っただけ。
「──…わ、何これ美味しそう…。行ってみたい…」
スマホの画面を見ながら、たった一言そう零しただけだった。
まさかそんな細かい事を覚えているとは。
不死川 緋翠ひすい
おかーさん、ぜんぶ、おいしそうッッ…!! どれが、いいかなぁ!!
メニュー表を見ては、はしゃぐひーちゃん。
とても嬉しそうに笑ってじっとメニュー表と睨めっこをしている。
不死川実弥
不死川実弥
…ふっ、あなた。決まったかァ?
あなた

うん、肉!!

不死川実弥
不死川実弥
はは、変わんねぇなァ。
そう言われ、高校生の時……実弥とファミレスに行って、肉にがっついていた時の事を思い出す。
あの時はまだ「不死川先生」だった。

……思えば、付き合い始めたのもあの日だ。


そして、5年以上前の事なのに全てを鮮明に思い出せるのは。
やはり、実弥との思い出全てが楽しくて幸せなものだからなのだろう、と思う。

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