日が沈み始め、腹も空いてきたという事で。
実弥が晩飯を食いに行く…と、また行き先を言わずに歩き始める。
暫く歩いて着いた場所は、今凄く美味しいと話題になっているレストランだった。
人気故に、席に着けるのには相当な時間並ばなければならない。
案の定、店の前は人が沢山並んでおり、1、2時間は掛かる事が容易に分かる。
……けれども実弥は、その列を無視しそのまま店に入っていってしまった。
慌てて呼び止めようとしたその刹那。
店員の声が響いて、
そう言っては口の片端を上げ、笑った実弥。
ひーちゃんはキラキラした店の雰囲気に夢中のようだ。
そうして私達は、案内された席へと腰を下ろす。
言った。
確かに此処は、私が行きたいと言っためちゃくちゃ美味しいと噂のレストランだ。
……ただ、ポツリと言っただけ。
「──…わ、何これ美味しそう…。行ってみたい…」
スマホの画面を見ながら、たった一言そう零しただけだった。
まさかそんな細かい事を覚えているとは。
メニュー表を見ては、はしゃぐひーちゃん。
とても嬉しそうに笑ってじっとメニュー表と睨めっこをしている。
そう言われ、高校生の時……実弥とファミレスに行って、肉にがっついていた時の事を思い出す。
あの時はまだ「不死川先生」だった。
……思えば、付き合い始めたのもあの日だ。
そして、5年以上前の事なのに全てを鮮明に思い出せるのは。
やはり、実弥との思い出全てが楽しくて幸せなものだからなのだろう、と思う。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。