第32話

聞き覚えのある
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2020/07/18 03:00
あなた

ほ、本当に……ごめんなさ……

あなた

っ!!

不死川実弥
不死川実弥
……気にすんなァ。
悪ぃ、得体の知れねぇ傷だらけの男なんざ、怖ぇに決まってるよな……
見れば、その人はとても辛そうに笑っていた。
……震えていた。
やってしまった、そんなのいくら私がアホでも簡単に分かる事だった。

……あれ?

アホって、昔、誰かに___
___アホ桐ィ!! まぁた授業サボりやがって…!
あなた

……?

聞き覚えがあるが、思い出せない。
それどころか、今日までの記憶が曖昧だ。
……いや、そもそも私は今、何歳……?
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あなたさん、病室に戻って下さい。
不死川さんも……今日はもう帰__
不死川実弥
不死川実弥
……
黙り込んだまま、その場を静かに立ち去る。
あの人は、私とはどういう関係だったのだろうか。
今となっては何も思い出せない。
あなた

……しのぶ、私って今何歳……?

胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
……確か、24歳だった筈です
24……?
思っていたよりも時が進んでいて混乱してしまう。
もう、とっくに成人して、なんなら子供が居てもおかしくはない。

……いや、私を貰ってくれる人なんて居ないか。
あなた

……ねぇ、しのぶ。
私って、これから先……
結婚とか出来るのかなぁ

胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
……はぁ、嫌味ですか…?
あなた

え?

嫌味を言ったつもりは、一切ないのだけれど。
何故かしのぶは、そう捉えてしまったらしい。

……ふと、無性に何かが食べたくなった。
そこで1番に思いついたのが、
あなた

萩……食べたいなぁ……

胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
!!
なんというか、馴染み深いというか。
何処か懐かしい気がした。

食べ物、そう自分に問うと1番に思いついたのがお萩これだった。
胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
……あなたさん、……まだ、思い出せないんですか?
あなた

え……と

___ふと、首元に違和感を感じた。
あなた

……あれ、これは……

翡翠の、ネックレス……。

瞬間、誰かの笑顔が頭の中に流れ込んできて。
でも、それでも、思い出せない。

きっと、私の大好きだった人。
愛していた人。
大切な人。
……かけがえのない人。
あなた

ゔ、ぅッッ……

胡蝶しのぶ
胡蝶しのぶ
あなたさんッッ…!?
激しい頭痛が私を襲う。
……けれど、何とか持ちこたえた私は、結局何も思い出せないまま___病室へと戻ったのだった。

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