実弥が、カフェオレとコーヒーを両手に持って此方に見せて来た。
……自販機で買ったものなのだろう。
近くにあったベンチに腰を掛ける。
横を見れば、コーヒーを静かに飲んでいる実弥。
……何やら不機嫌そうだ。
いつもの覇気がない。
図星のようだ。
よく良く考えてみれば実弥は、お萩が好きな甘党男子なのである。
それを嫌な顔一つせず私にカフェオレを渡せるのはなんか凄いなって思った。
……自意識過剰かもしれないけど、実弥は私やひーちゃんと居る時“だけ”…凄く、優しい顔をするんだ。
とか言いながら受け取り方がなんかぎこちない。
実弥の一つ一つの行動に笑ってしまいそうになる。
でもスマ〇ラされたくないから必死に堪える。
……その繰り返し。
私がカフェオレを飲み終わったタイミングで、
と声を掛けてくる実弥。
……わを、いつの間にコーヒー飲み終わってる。
……そう言ってしれっと自分の羽織をひーちゃんに被せる。
なぁんでそんな自然と動けるのかねぇ…。
……改めて私は、優男の考えている事はよく分からない、と再認識したのであった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!