そうして、支度を済ませて家を出る。
……生暖かい風が吹き通っている。
4月。今日は、キメツ学園の入学式…。
実弥さんは今頃、着々と入学式の準備を進めている事だろう。
……丁度いい日差しに、雲一つない青空。
そして、あちこちに咲き誇る満開の桜。
今日は、凄い散歩日和だ。
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ずぅっとまえから、きになっていることがあります。
おとーさんのことです。
おとーさんは、ひすいたちのことを、かなしそうなかおをしてみていることがあります。
ひすいは、なんでだろうって、ずっとかんがえていました。
ひすいのてを、ぎゅっとして、おそらをみあげながら…おかーさんはしゃべりました。
おかーさんのいっていることがむずかしくて、よくわかりません。
そうきくと、
おかーさんも、かなしいかおをして、そういいました。
おかーさん、おとーさんと、ごはんをたべて、おはなしして、おひるねしたりして、よるはねむる。
ひすいは、それだけでしあわせです。
なのになんで、おかーさんとおとーさんは、かなしいかおをするのかな。
ひすいには、よくわかりません。
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玄関のドアを開け、リビングに居るであろうあなた達に聞こえるようにそう言う。
……すると、ドタバタと足音がして、
あなたが緋翠を抱えて出迎えに来た。
……コイツらを見てると、不安が募る。
俺がこんな幸せで良いのだろうか。
あなたの相手が、俺でよかったのだろうか。
……前世でそうだったように、また。
俺は、失うのではないか、と。
たまに、そう思ってしまう事があって。
……けどまぁ、そんな考えも。
コイツらを見てると、結局…何処かに吹き飛んでしまって。
少し……黒い笑みを、あなたの方に向ければ。
とか言いながら、悶えるあなた。
今日は随分と疲れていた筈なのに。
そんな疲れなど、とっくのとうに忘れてしまっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。