朝。目が覚めると見覚えのない天井。
あぁ、確か旅行に来てたんだっけか。
……ふと横を見れば。
娘と一緒に眠る妻。
寝相が悪い所為か、その妻の浴衣がはだけていた。
……幸せそうに寝やがって。
はだけた浴衣を、あなたが起きてしまわないように……ゆっくり直す。
布団も掛け直し、もう一度俺も布団の中に潜り込んで。
そう言って小さく微笑んだ。
* * * *
目が覚める。
と同時に違和感。
うちの天井じゃない…し、ベッドじゃない。
……あ、そっか。
旅行来てたんだっけ。
…ふと、横を見れば。
笑顔が眩しい。
やばいよ、うん。破壊力。
朝からコレはちょっと眩し過ぎる。
……こいつ。
熱じゃないってわかってて聞いてんな…?
やっぱこの人、根っからSだよな。ドSだよな。
虐めるの大好きなの? この人。
……まぁ…カッコいいから全部どうでも良くなっちゃうんだけどさぁぁぁ……。
不敵な笑みを浮かべる実弥。
いや……全部カッコいいとか狡くないですか。
……実弥、若干怒ってる…?
チラッと後ろを見れば、実弥のさっきの笑顔はどこかへ行ってしまい、少し眉をひそめた実弥が居た。
よく見れば、額に青筋も浮かんでいる。
やば、怒ってる……完全にッッ……。
…スマ〇ラされる……?
嫌だ、嫌だな…。アレ結構痛いんだよ。
小説の力でなんとか生きてるけどさ……。
実弥が此方へと近付く。思わず、目を瞑る。
……ギュゥッッ…
身体中に行き渡る体温。
暖かい。
……え、抱きしめられてる…?
まるで小さな子供をあやすかのように、心地よいリズムで私の背中をトントンと叩く実弥。
なんて、離れて向き合ったかと思えば今度は私の頭を撫でてくる実弥。
……あー、何したら私の機嫌が良くなるのか全部分かってるんだもんなぁ、この人。
ぼそっと呟く。
どうやら聞こえていたらしく、溜め息を吐かれ再度抱きしめれた。
若干、紅を差した実弥の耳。
久し振りに赤くなってる実弥を見たかもしれない。
……いや、案外昨日の車の中とかでも見たな。
そんなくだらない事を考えながら、実弥と一緒にひーちゃんを起こした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。