第29話

見覚えのある場所
7,496
2020/06/22 12:24
不死川実弥
不死川実弥
(……緋翠は、)
良かった、無事みてぇだ。

……家ン中ここで戦えば、あなた達が危ねぇな。
不死川実弥
不死川実弥
オイ鬼さんよォ。
場所変えようぜェ、ここじゃァ思うように戦えねェ。
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
……良いだろう。
なら、
人気のない場所を一つ知っている。
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
……鳴女。
無惨がそう言った瞬間、どこからか……琵琶の音がして。
そして次の瞬間。
……俺は、どこか“見覚えのある場所”へと飛ばされていた。
不死川実弥
不死川実弥
ここ、は………
︎︎













不死川実弥
不死川実弥
無限………城……?
* * * *
いた、い。

身体中が、ズキズキと痛む。

あれ、どこだ……ここ。

…あぁ、自分の家だ。
あなた

ッッ……ゔ…、

一体、何が、
『お前を私の嫁にしてやろう。
 そして……最凶の鬼を産むのだ。』
は、嫁…?

最凶の鬼……??
『これで今度こそ…鬼殺隊の奴らを……』
鬼殺、隊………。

何それ…。

……それから、何が……あったんだっけ。

えっと、

……………あ。
あなた

ッッ!!!!

首元を反射的に抑える。

接吻痕ッッ…!?!?

何で、あ、あの男ッッ…、

……実弥にしか、された事なかったのに、
あなた

そ、んな、

瞬間……ズキンッッッ!!!!!! と、言葉では言い表せない程の痛みが身体中を襲った。
あなた

づ、ぅ゙……ッッ、

そうだ、ひーちゃんは……!?

そう思い至った時には、もう身体中の痛みなんて無視してひーちゃんが寝ている筈のベッドへと走り出していた。
不死川 緋翠ひすい
Zzz…Zzz…
あなた

良かっ………た……

……そうして私は、意識を手放した。
* * * *
不死川実弥
不死川実弥
はっ……はァッッ………はーッッ……
不死川実弥
不死川実弥
スゥゥ………シィイィィイィィ…………
何とか、無惨の野郎の攻撃を凌げてはいるが。
駄目だ……このままじゃ、俺、





──……死、
不死川実弥
不死川実弥
風の呼吸 捌ノ型ァ………
不死川実弥
不死川実弥
初列風斬りッッ!!!!!!
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
………
……かすりもしねェ。

前世でぶっ殺したラスボスが、一緒に……同じ時代に転生って……はっ、ふざけんなよ。


やっと、手に入れた、幸せ。


なァ、それすらも奪おうとすんのかよ。

……神は、どこまでも俺を追い詰めてきやがる。
不死川実弥
不死川実弥
風の呼吸ッッ………玖ノかッッ………
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
悪いな。時間切れだ。
……薬の効果が切れてしまった。
鬼舞辻無惨
鬼舞辻無惨
またいつか会おう、風の柱。
私から……逃れられると思うなよ。
ベベンッッッ!!!!!!
不死川実弥
不死川実弥
……あ?
気が付けば、そこは自分の家。
少し……血生臭い匂いのする、俺の家だった。

……待て、血生臭い…?
不死川実弥
不死川実弥
っ…あなたッッ!!!!!!
少し探せば、緋翠の眠っているベッドのすぐ側の床で……倒れている、嫁の姿があった。

……酷く痛々しい姿だった。

身体中の傷が目に入る度、自分の顔が歪んだ事が分かる。
あなた

……ぁ、………

不死川実弥
不死川実弥
あなた!!!!!!
薄らと目を開けたあなたは、俺を見ると安心したかのように小さく微笑んで。

そうしてまた……意識を失ったのだった。

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