良かった、無事みてぇだ。
……家ン中で戦えば、あなた達が危ねぇな。
無惨がそう言った瞬間、どこからか……琵琶の音がして。
そして次の瞬間。
……俺は、どこか“見覚えのある場所”へと飛ばされていた。
︎︎
* * * *
いた、い。
身体中が、ズキズキと痛む。
あれ、どこだ……ここ。
…あぁ、自分の家だ。
一体、何が、
は、嫁…?
最凶の鬼……??
鬼殺、隊………。
何それ…。
……それから、何が……あったんだっけ。
えっと、
……………あ。
首元を反射的に抑える。
接吻痕ッッ…!?!?
何で、あ、あの男ッッ…、
……実弥にしか、された事なかったのに、
瞬間……ズキンッッッ!!!!!! と、言葉では言い表せない程の痛みが身体中を襲った。
そうだ、ひーちゃんは……!?
そう思い至った時には、もう身体中の痛みなんて無視してひーちゃんが寝ている筈のベッドへと走り出していた。
……そうして私は、意識を手放した。
* * * *
何とか、無惨の野郎の攻撃を凌げてはいるが。
駄目だ……このままじゃ、俺、
──……死、
……かすりもしねェ。
前世でぶっ殺したラスボスが、一緒に……同じ時代に転生って……はっ、ふざけんなよ。
やっと、手に入れた、幸せ。
なァ、それすらも奪おうとすんのかよ。
……神は、どこまでも俺を追い詰めてきやがる。
ベベンッッッ!!!!!!
気が付けば、そこは自分の家。
少し……血生臭い匂いのする、俺の家だった。
……待て、血生臭い…?
少し探せば、緋翠の眠っているベッドのすぐ側の床で……倒れている、嫁の姿があった。
……酷く痛々しい姿だった。
身体中の傷が目に入る度、自分の顔が歪んだ事が分かる。
薄らと目を開けたあなたは、俺を見ると安心したかのように小さく微笑んで。
そうしてまた……意識を失ったのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。