行かねぇと。
___今度こそ、あいつをぶっ殺しに。
* * * *
瞬間、無惨から触手のようなものが全方位に放たれる。
これは前世でも使ってきた厄介な力だ。
威力が半端ないのと
速すぎて目で追えない。
前世は___……生き残った柱と、隊士達が一斉に畳み掛けて、やっと勝つことが出来た。
そのくらい、とんでもなく強い相手だった。
炭治郎達の活躍も大きかった。
炭治郎達が居なければ、きっと、勝てなかっただろう。
でもこの場には、炭治郎達は居ない。
……だが。
前世で、戦いに参加出来なかった者がいる。
無惨は前世と比べればそこまで強くはないだろう。
そして、俺達の容態は万全だ。
上弦と戦ってから来た訳でもないのだ。
勝算は、充分にある。
瞬間、とてつもない轟音が鳴り響いた。
そう言った彼は、風柱は……暴れ始める。
前世と差程変わらない動きを、している。
まさか、ずっと鍛錬していたのか…?
この男は、間違いなく___
今この場で、誰よりも強い。
* * *
チラつく記憶があった。
一人の少女の記憶だった。
その少女は、恋をしていた。
とある上官に、片想いをしていたようだった。
その組織では、その上官達は「柱」と呼ばれていた。
その少女は、黒い隊服を着ていた。
その組織には階級というものが存在するらしい。
少女の階級は「甲」だった。
とある任務でのことだ。
とある柱と共に、少女は任務に出ることとなった。
風柱と呼ばれる、粗暴で恐ろしい性格の男だった。
最初はこちらのことを信用している様子はなく、
なにかする度に睨まれていたのを覚えている。
だが、敵に襲われ死にかけた時に、
___身を呈してまで庇い守ってくれた。
この瞬間だろう。この時、少女は。
恋に落ちた。
だが、その恋は報われることなく終わった。
最後の戦いで、少女の命は散ったのだ。
風柱にも、少女は認知されていなかった。
少女は、後悔した。
"愛されたかった"と呟き、少女は。
___……少女の名前は、青桐あなたと言う。
私の、前世の記憶だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。