毎朝コンコン、という音で目を覚ます
いつものように重たい目を擦りながら起き上がる
ベッドの側の机に置いてあるコップに注がれた水を一口飲む
コクリ
ガチャ
ここから少し離れたドアから執事が顔を出す
シャラシャラシャラシャラ
ポカポカと外の日差しが暖かい
いつものように少し高いベッドを降りる
と、いつもと変わらないことを言う
いつもと同じように顔を洗い、ドレスに着替える
コツコツと靴の音がよく響く長い廊下を歩き、広間へ向かう
ステンドグラスの窓が透けて廊下に色とりどりな影を写している
と、ポツリと呟く
外でティータイムでもしようかしら
広間へ続く大きなドアを通り、誰もいないテーブルにつく
と、呟く
お父様は仕事で別領にいて本館には私一人
お母様は数年前に病気で…
と、暗い気持ちに沈みかけたとき、目の前に美味しそうな朝食が運ばれてきた
フーフー
コクッ
カチャカチャ
ハムッ
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コクッ
と、食後のアフタヌーンティーを飲み干す
ビクッ
なぜかじゃぱぱの目がいつもと違うような
静かで怖いわ
えっ
ビクッ
気の所為じゃない
いつからこんなふうに?
こ、怖い目で見ないで
スッと服の内ポケットに入れようとしたとき思わず手を伸ばしてしまった
しまった
もう遅かった
私はなぜ手を伸ばしてしまったのだろう
あの鋭く冷たい目を見ていたのに
と、先程アフタヌーンティーを飲んだのに飲めといわんばかりに紅茶を入れてきた
あの冷たく静かな目で見られていたので喉もカラカラになっていた
圧がかけられていた最中、コクリ、と一口飲む
い、痛い!!
頭が、身体が、
気持ち悪い
しんどい
痛い
ガシャン
と
ティーカップが割れる音がする
目の前が暗転していく
苦しい息が絶えそうになった時、遠くの方でじゃぱぱの声が聞こえた気がする
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!