第198話
⑥
重岡side
照史の腕の中で泣いている濵ちゃんを俺らは
見守ることしか出来ひんかった。
何をすればいいのか分からないまま
時間は過ぎて行った。
まだ泣き止まない濵ちゃんが何時泣き止むかなんて
分からないからとりあえず照史に任すことにして
俺らはあなたの方を見ることにした。
涙でぐしょぐしょの小瀧はまだ寝ているあなたの
頭を撫でながら手を握っていた。
寝ているあなたの体の上に小瀧は自分の頭を
乗せて泣きじゃくっていた。
神ちゃんが水の入ったコップを持ってきて
小瀧に飲ませようとした。
ゆっくりやけど神ちゃんから貰ったコップを
小さく口に持っていきチビチビと飲み出した。
半分くらい飲み終えた小瀧はそのままコップを
神ちゃんに渡してまたあなたの方に視線を移した。
小瀧が視線を移したその時……
急に起き上がろうとするあなたの体を小瀧が支えた。
それからまたちょっと顔色を悪くしたあなた。
そのままあなたは立ち上がって
照史の方に向かった。
照史の腕から優しく濵ちゃんをもらって
今度はあなたの腕の中で泣きじゃくる濵ちゃん。
力強くそう言ってあなたの背中に腕を回し
強く抱き締めた濵ちゃん。
それから2人の熱い絆が更に深まり
濵ちゃんとあなたはお互いを強く抱きしめた後
お互いを離してまた目を合わせて笑いあっていた。
俺もいつかあんな素敵なかっこいい
男の友情!!っていうものを神ちゃんとか
あなたと一緒に…
いやメンバーと一緒に更に築き上げて行きたい
って思った。
素敵な空間に包まれていた中
一気に現実に引き込まれたのは
あなたの家に響くインターフォンの音だった。
インターフォンの音で俺らの空気はピリついた。
濵ちゃんはあなたを背中に隠したり
その背中に隠れているあなたも
いつでも濵ちゃんを守れるようにちょっと
横にずれていたり
そんなちょっと横にずれているあなたの前に
小瀧が立って、濵ちゃんの前には流星が跪いて
神ちゃんは流星の右横に立っていた。
インターフォンのカメラを解除して
インターフォンのマイクに向かって喋る照史。
しかし相手は何も喋らなかった。
違和感を覚えた俺は照史の方に行って
どんな奴が立っているのか気になって
インターフォンを見てみたら…
あなたの方に一旦視線を移した濵ちゃんは
そのままこっちに向かって来てくれた。
その間あなたは神ちゃん達に任せたらしい。
インターフォンの前に立っているのは
ある時1回あなたが入院していた時に
1度だけあなたの裏道で待ち伏せをしていた
あのスーツの男だった。
濵ちゃんもそれに気付いて直ぐにあなたの方に
戻った濵ちゃんはそのままあなたを優しく立たせて
あなたを奥の部屋に連れて行った。
もう一度照史はインターフォンのマイクに向かって
って言ったけどスーツの男は帰らずに
そこにずっと突っ立ったまんまやった。
痺れを切らした淳太が俺らの方に来て
照史と交代してインターフォンのマイクの前に
立った。
すると男2人が俺らに白色の紙を見せた。
そこには赤い字で確かにこう書いていた。
いつの間にかこっちに戻ってきていた濵ちゃんは
いつもより低い声でカメラに近付いた。
それだけ言って濵ちゃんはマイクの音を切って
またあなたが居る部屋に戻った。
何が……どういう事やねん。
こいつらのせいであなたが過呼吸持ったって
どういう事やねん。
俺はこの時やっと気づいた。
あなたの過去はそう簡単には抜け出せられない事を。
簡単には…………解決が出来ひんって事を。