重岡side
8月26日 午後12:00
突然家のインターフォンが鳴った。
宅配「お届けものです!」
宅配物を受け取ろうとリビングから出て
玄関へと向かう。
ドアの鍵をガチャと音を立てながら扉を開けた。
はい、重岡大毅。
28歳になって初めて恐怖というものを体験しました。
やってそこに居たのは…。
そう、住所も家も何も教えていないのに
メンバーのあなたが立っていたから。
段々あなたの声のボリュームも
大きくなってきたから渋々家の中に
入れることにした。
とりあえず適当にコップに水を入れた。
ほんまはこの水の中に辛いもんとか入れたいけど
そんなんしたら更になんかされそうやから
やらないことにした。
水を渡すとちょびちょび飲むあなた。
時間稼ぎか?ん?んーーー??
皆様、僕はあと何回驚かされるのでしょう。
皆様、僕はあと何回怖い思いをするのでしょう。
どうやら彼は…
俺を淳太と間違えてるようにしか思いません。
まず頭の中で整理します。
はい、僕は今とても混乱しています。
とりあえずマネからの連絡が気になった俺は
ピアノの上にある携帯を取ってメールを開いた。
確かにそこには
あなたが言ったようにマネからの連絡が来ていた。
しかも…何通も。
俺その時何してたっけ??
…あぁ、ピアノや…。
ピアノを弾く時はなるべく音を切ってるから
気が付かなかったんや。
どこか一点を見つめるあなた。
なんや?そんなシリアスな仕事なん?
重岡大毅、更に思考停止です。
えっ?そんな理由で?
確かに昨日のグループメールでは
あなたはメールに入ってこなかった。
なんなら既読も1つ足らなくて…。
すると握りしめていた携帯が震えた。
液晶画面には「マネージャー」の文字。
メールがまた新しく送信されていた。
そこには
「僕が勝手にした事です。あなたは責めないで下さい。
本当にすみませんでした。
後、僕からのお願いなのですが
あなたを励まして欲しいです。
次の仕事がかなりハードなもので
打ち合わせ中も顔色が悪くなってしまって…。
今、あなたの気分転換のため
全体で休憩を入れてます。
本来ならこういう時濵田さんの方に行くのですが
誕生日のこともあってどうしても重岡さんが
いいと言っていたので…。
それに、落ち着ける場所はきっと
初めて行く大毅の家かもと言っていたので
時間になったら僕が迎えに行くので
それまであなたの心を休ませてあげて下さい。お願いします。」
マネからのメールを見て疑った。
…ハードな仕事ってなんやねん。
俺は気になったからマネに返信をした。
割と直ぐに返信が来た。
内容も内容だが共演者も共演者だとか…。
この事務所に入っていると
仲良くなりたいが故に変に入り込んできたり
勝手に連絡先を聞かれたりと
色々とされたりしてしまう。
現にあなたは以前共演者からの嫌がらせを受けてから
ドラマなどの仕事が決まる度共演者を気にしていた。
もしかしたら…この間のような悲劇が
また目の前で起こる可能性がある。
また気が付かないうちに 知らない内に
あなたは傷ついてしまうかもしれない…。
あなたはなんのことか悟ったらしく
急に静かになって窓の外を眺めていた。
俺からはあなたの後ろ姿しか見えないけど
その後ろ姿だけでも不安やらのマイナスの感情が
溢れ出ていた。
居た場所から歩き、あなたの横に腰掛けた。
普段はあなたに色々してもらってるから
今日は俺が色々せなあかんと思う。
俺は無言であなたの肩を抱き
俺の肩の方へと寄せ抱きしめていた。
恥ずかしくなったのかあなたは
俺の肩に頭を押し付けそのままグリグリと
頭を押してきた。
すっと立ち上がってカバンの中から
綺麗にラッピングされたものを取り出した。
ちょっと大きいプレゼントを丁寧に
両手で俺に渡した。
お礼が言い終わる前にあなたの携帯が鳴った。
マネからなのか意外と時間がかかっていた。
静かにあなたから貰った誕生日プレゼントを開けた。
どれもこれも高級なお店のもので…。
練習着なり、練習靴なり
更には作曲用のノートや作詞用のノート。
作曲用と作詞用で分けてくれるのは凄く嬉しかった。
ノートの表紙にはそれぞれS.Dどかっこよく金色の
文字で書かれていた。
大人な感じの誕生日プレゼントで嬉しかった。
このノートならきっと今よりももっと
いい曲がかけそうな気がした。
じっくりと誕生日プレゼントを眺めていたから
あなたが電話を終わっていたことに気づかなかった。
それとちょっとだけあなたも
俺が楽しんで誕生日プレゼントを見ていた為
話しにくかった感じがした。
そんなことは彼女にでも言ってや!と
心の中でツッコンで俺は玄関まであなたを
見送ることにした。
忘れ物がないかなどチェックをした後
ゆっくりと玄関の方に向かうあなた。
俺はその後ろを歩いてあなたが靴を履いて
鍵を開けたのを確認した。
「じゃあ」と扉を閉めたあなた。
俺はこっそり閉めた扉を音が鳴らないように
また開けて
マンションの廊下をゆっくり歩くあなたの背中を
見えなくなるまで見守った。
最初は家バレたから引っ越せな!とか思っとったけど
あなたがまた不安や恐怖を抱えた時
直ぐにまたここに来れるように
濵ちゃんが用事で家に居なくても
濵ちゃんが仕事で家に居なくても
濵ちゃんが仕事で帰りが遅くなっても
安心して頼れる場所があった方が
安心して受け入れてくれる場所があったら
安心してまた第2の家のように来てくれたら
…安心する場所が自分の家以外でもあったら
俺にとってもあなたにとっても良いかなと思い
引越しはせずに合鍵を作ろうと決めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。