第244話

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2021/11/28 02:05

社長の言う通り、ほとぼりが冷めるまで私は秘書業務から外れて、社史編纂室にいた。


仕事という仕事もない、まさに閑職。
言うなれば給料泥棒。

早出もなければ残業も休出もない、毎日が睡魔との戦い。
忙しく働いている方が性に合っている私には、拷問のようだった。


だけど、ここから出ることは許されない。
少しの辛坊と思って耐えた。


マキちゃんは私のことを心配したのか、度々一緒にランチしましょうって来てくれた。
社食にはさすがに行けないから、社史編纂室でのランチ。

ウトウトしている小島さんを起こさないように、小さな声でお喋りをする。


「ポカポカしてて良いとこですねえ、ここ」
「そうでしょ?居心地が良すぎて自分がダメ人間になりそうだよ」
「お仕事、忙しくないんですか?」
「全然!毎日さっさと帰ってる」
「そうなんですか?じゃあ今度、一緒に飲みに行きましょうよ!」
「いいよ、行こう!」
「あ…でも、社長に怒られません?」
「どうして?」
「私、嫌われてるみたいだし…」
「そんなことないよ!あの時はタイミングが悪かっただけで」
「…だといいんですけど」


マキちゃん…
もしかして、本当はまだ社長のことが好きなのかなあ。


マキちゃんを傷付けた張本人のくせに、私の胸は自分勝手に痛んだ。

偽善者なのかな、私。


「じゃあ…今日なんてどうですか?」
「今日…?」


急だな。
でも確か、今朝社長が「今日は遅くなる」って言ってた。


「ダメならいいんです、また今度でも」
「いいよいいよ!今日行こう!」
「ホントですか!?良かったー!」


マキちゃんが嬉しそうだから、私も笑顔になる。


社長にはあとで連絡しておこう。
たまには私も飲みに行ったっていいよね?

会社の女の子と飲みに行くなんて、ハルちゃんと行った以来だ。
どれくらいぶりだろう?

楽しみ!

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