「じゃー、俺らはそろそろ行くか」
イケメン二人が席を立つ。
その途端、窓からの陽の光が二人を照らしてキラキラオーラが撒き散らされる。
パイプ椅子を持って立ち上がっただけなのに。
はうっ!
眩しい!
浅草寺のアレよりもご利益ありそう、浴びなきゃあのキラキラ!
…ふざけている場合ではなかった。
こんな美しい人が二人も、私のためにここまで来てくれたなんて。
「あの…お二人とも、来てくれてありがとうございました」
「いいえー」
「何かあったら連絡しろよ」
「はい」
嬉しかった。
社長と岩本さんが来てくれて、話をしてくれて。
居眠りはしてしまったのは不覚だったけど、ずっと一人で不安だったから。
名残惜しいなあとか思い始めている私。
さっきの寸止めキスを思い出したりして。
こんな時に不謹慎極まりない。
…と思ったら。
社長が急に忘れ物を思い出したように近付いて、耳元で囁く。
「気を付けろ。小島と照以外は信用するな」
「…わかりました」
「照と少し調べてから帰るから。先に寝てろ」
「はい…」
返事をした私の口が、一瞬で塞がれて。
気が付いたら目の前に、いたずらっ子みたいに笑う社長の顔があった。
「隙アリ」
「すすすすきぃー!?」
「いつも気を付けろっつってんのはお前のそういうとこだぞ」
「へっ!?どういうとこ…?」
「モノ欲しそうな顔しやがって」
「…!?」
バレてた!
チューし損ねた、とか思ってたのバレてた!
恥ずかしい!
嬉しいけど!
「だから、反省しろって」って呆れる岩本さんの声が遠くに聞こえて。
小さなぬくもりを残して、社長は書庫を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。