岩本さんと麗華さんが社長の側に居てくれて良かった。
麗華さんにはやっぱり少しだけ嫉妬しちゃうけど。
心が狭いな、私。
「岩本様も真行寺様も、お父様が旦那様のご友人でして。
蓮様の様子に心を痛めた旦那様が、引き会わせたんですよ」
「心を痛めたって…会長は社長への愛情があったんですか?」
「もちろんです。愛した女性との間にできたお子さんですからね。
蓮様のお母様とは大人の都合で引き裂いてしまったわけですし、罪悪感もおありだったことでしょう」
「そうだったんですか…」
「それからはまあ…色々ありましたが、立派に成長されて。
今では社長の座に…何とも感慨無量でございます」
小島さんが涙ぐむ。
私まで何だか貰い泣きしそう。
小島さんが言う色々の中には、きっともっと大変なエピソードがあるんだろうな。
社長が金髪にしたときの話とか。
小島さんはどんな時も、社長の近くで社長を見てきた人。
岩本さんも麗華さんも小島さんも。
社長の恩人だ。
色んなことを背負って、小さい頃から辛い思いをしてきた社長。
それでも彼は、社長としての地位を築き上げた。
すごい人。
私なんか、逆立ちしたって敵わないだろう。
小島さんが、口元に人差し指をあてて微笑む。
「今の話は、社長には内緒ですよ」
「わかってます」
私は、ゆっくりと頷いた。
小島さんの話は、胸の奥が痛くなったり温かくなったり。
色んな感情が体を駆け巡った。
私も小島さんや岩本さんや麗華さんみたく、社長に寄り添える人になりたい。
社長の心の支えになりたい。
そう、強く思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!