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第1話

入学式
36
2018/11/09 11:19


~20XX年4月~


「只今より、第XX年度桜桃学園入学式を執り行います。」

教頭先生による、入学式開式の言葉を告げられ、新入生を初め、在校生、先生方、来賓の方々が姿勢を整え立ち尽くす中、2年生となり、先輩と言う立場になった神崎真妃(カンザキマヒル)は、緊張の余りガチガチに身体を震わせ、校長先生の話を聞いていた。

「真妃ちゃん、大丈夫?」

と、隣に座っているクラスメイトの女の子に優しく囁くような声を掛けられたが、引っ込み思案で中々友達の出来ない真妃は、

「…だ、だだだ大丈夫です!!」

と、かなり大きな声で返答してしまった。
先生に"真妃静かにしろ~"と言われ、真妃は顔を真っ赤にしながら"やっちゃった~…。"と心で感じた。


真妃は入学式が終わり、教室に戻ると、真妃の幼馴染で腐れ縁の轟信弥(トドロキシンヤ)が真妃の席に座り、真妃を見ながらニヤニヤしていた。

「お前入学式早々に目立ってどうすんだよ。」

笑いながら言った信弥に

「う、うるさいよ!」

と頬を赤らめながら返し、"って言うかそこ私の席だから退いてよ"と付け足した。

「ちぇ~、真妃つれねぇの~」

と半べそを掻きながら信弥は自分の席に座る。真妃の隣だ。

「何で信が隣なの。」
「名簿だ。仕方ねぇよ。」

そんな会話をしていると、先生が1人の美少女を連れて教室に入ったきた。男子の大半は、その美少女に釘付けになっていた。

「お~し全員席付け~。今日から新しい仲間が増えた。自己紹介すっぞ~。」

と、相変わらずのやる気のない声で教壇に立ち、生徒の前で話すと、黒板に美少女のものであろう名前を書き始めた。そして黒板上の書き終わった名前を見ると、

『西条 月』

と書かれていた。

「皆さん初めまして。西条月(サイジョウ ルナ)と言います!」

教壇に立った美少女が、一つにしばった持ち前の長く茶色い髪を揺らし、自己紹介を始めた。その美少女のルックスの良さに、男子の目は完全にハートになっていた。

「今日から皆さんと共に勉強し、仲良くなって行きたいと思います。よろしくお願いします。」

月は上品に頭を下げると、男子達から"フォー"や"よろしくな~!!"等という声と共に、立って動いたり拍手が送られた。そして、等の女子達は、"男子達テンション高すぎ~""うるさい~"等という非難の声が上がっていた。
そしてその様子を見ていた真妃は、"綺麗な子だなぁ。こんなに綺麗な子なら、流石に信も..。"と心で呟きながら隣に座る信弥に目を向けると、特に変わった様子もなく、騒ぐことも無くただ椅子に座って無関心な様子を見せていた。

「じゃあ西条の席はあそこな~。轟、お前学級委員だろ。校舎案内してやれ。」

先生は空いている席を指差し、面倒くさそうに表情を歪めながら信弥にそう言った。

「…分かりました。」

少し間が空いたが、頷きながらそう言った。
信弥の事が好きな真妃は、ほんの少しだけ嫉妬心を覚えたが、直ぐに心の奥にしまい込んだ。

そして、この後あんな事が起きるなんて、真妃はまだ知る由もなかった。



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