現パロ
早朝の学校の屋上で毎朝詩を書くのが好き
時計の針が1秒1秒経つ度になって
まだ微かに夜が混じった空に飛ぶ鳥
心を落ち着かせるにピッタリな光景だった
でもそれが一番の目的では無い
音楽の先生が置いていったままの大きいハープ
それを名前も知らないあの子が弾く音が好き
暗い感情なんてこれっぽっちもないような表情
自然を操っているのでは無いかと思うほどに
心地よい風
そんな彼女にいつの間にか惹かれていった
毎朝早起きして、彼女に会うのが楽しみになって
時々授業に集中できない時がある
でも、決して詩を書く手は止めなかった
最近は彼女をモチーフにして書くことが多くなり
愛のある詩になってしまった
そして完成した今、私物のライアーを使って
軽く演奏する
奥には彼女がいるし、モチーフ本人に向かって
この詩を口に出すのは少々恥ずかしい
もしこの詩に耳を傾け、詩を諳んずれば
自分のことだということが分かってしまう
ライアーの弦を一つ一つ、的確に弾き
詩をゆっくりと口に出す
彼女の音色を聴きながら。
しかし、歌ってる最中に彼女の音色が変わった
自分の音色と合わなかった彼女の音色が
まるで僕に合わせたかのような音色へと変わった
僕の詩が終わりを迎えた時、彼女が口にした
彼女の、詩
彼女を見つけただけで聞いたことない声
どんな女優や歌手よりも透き通った声をしていて
儚く綺麗だった
まるで天使の子守唄かのような優しい声
また僕は、彼女に惹かれてしまった
先輩の、あなたのいる方向を向けば
弦が外れたハープと
あなたが履いていた靴だけが残されていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。