第57話

早朝の音色(ウェンティ)
5,665
2023/04/16 05:36
現パロ
早朝の学校の屋上で毎朝詩を書くのが好き
時計の針が1秒1秒経つ度になって
まだ微かに夜が混じった空に飛ぶ鳥
心を落ち着かせるにピッタリな光景だった
でもそれが一番の目的では無い
音楽の先生が置いていったままの大きいハープ
それを名前も知らないあの子が弾く音が好き
暗い感情なんてこれっぽっちもないような表情
自然を操っているのでは無いかと思うほどに
心地よい風
そんな彼女にいつの間にか惹かれていった
毎朝早起きして、彼女に会うのが楽しみになって
時々授業に集中できない時がある



ウェンティ
……よし
でも、決して詩を書く手は止めなかった
最近は彼女をモチーフにして書くことが多くなり
愛のある詩になってしまった
そして完成した今、私物のライアーを使って
軽く演奏する
奥には彼女がいるし、モチーフ本人に向かって
この詩を口に出すのは少々恥ずかしい
もしこの詩に耳を傾け、詩を諳んずれば
自分のことだということが分かってしまう
ウェンティ
ウェンティ
早朝の音色が眠った鳥たちを起こし
ウェンティ
小さな小鳥が、その音色に惹かれる
ライアーの弦を一つ一つ、的確に弾き
詩をゆっくりと口に出す
彼女の音色を聴きながら。
しかし、歌ってる最中に彼女の音色が変わった
自分の音色と合わなかった彼女の音色が
まるで僕に合わせたかのような音色へと変わった
あなた
民から見放された1つのガラクタ
あなた
それを1羽の白鳥が目を向け
あなた
弦を弾く
ウェンティ
……ぇ、
僕の詩が終わりを迎えた時、彼女が口にした
彼女の、詩
彼女を見つけただけで聞いたことない声
どんな女優や歌手よりも透き通った声をしていて
儚く綺麗だった
まるで天使の子守唄かのような優しい声
また僕は、彼女に惹かれてしまった




















ウェンティ
……、
あなた
…君、名前は?
ウェンティ
えっ、えっと
ウェンティ
2年の、ウェンティ
あなた
よろしく、ウェンティ
ウェンティ
……あの、君は…
あなた
3年のあなた
ウェンティ
先輩だったんだ……
あなた
君、毎朝いる子だよね?
ウェンティ
うん、先輩もだよね
あなた
呼び捨てでいいよ
あなた
歌声綺麗だった
ウェンティ
そんな!君の方がよっぽど…
あなた
私の歌声より上手な人は沢山いる
ウェンティ
そんなことないよ。
ウェンティ
少なくとも、僕は出会ってきた中で
一番綺麗だった
あなた
お世辞が上手だね
ウェンティ
お世辞なんかじゃ…!!


ウェンティ?HR始まるよ?
ウェンティ
待って、まだ先輩と話が
……先輩?





















どこにもいないけど






















ウェンティ
え、?























先輩の、あなたのいる方向を向けば
弦が外れたハープと
あなたが履いていた靴だけが残されていた

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