第13話

〈3 体育祭〉5
1,633
2019/01/18 01:17
由奈と合流し、応援に回ったりお昼を食べたりしているといつの間にか下校可能時刻になっていた。
月本由奈
月本由奈
理緒~そろそろ帰ろっか
やることも特になかったので帰り支度をしていると由奈が急に声を上げた。
月本由奈
月本由奈
あぁ! そういえばバドミントンの片付け行かなきゃだったよ~……
佐倉理緒
佐倉理緒
あ、そっか。あたしも行く
急いで体育館に行き片付けを始めるとドジな私は支柱で手を切ってしまった。
佐倉理緒
佐倉理緒
いったぁ……
月本由奈
月本由奈
理緒大丈夫? 保健室で絆創膏もらってきなよ。そしたら教室で待ってて
佐倉理緒
佐倉理緒
うん、そうする……。ごめんね
トボトボと保健室へ行き絆創膏をもらい教室へ戻ろうとしたが、まだ時間がありそうだったので理科室へ寄ってみる事にした。
(Kくんから返事、来てるかもしれないし……)
理科室の前まで来て扉に手をかけ開こうとすると、中に人影が見えた。
その瞬間ドキッとして手を離す。そして、そーっとのぞくと私の期待通りの人の姿が見え、急に心拍数が上がる。
(何で桐生君がここに……? もしかしたら落書きの返事を書きに来てくれたのかも)
そう考えるとドキドキは一層高まった。
佐倉理緒
佐倉理緒
何?
(え? ば、ばれてるー!?)
いきなりの問いかけにあせった私は胸を押さえ大きく息を吸い込み気持ちを落ち着かせた。
そして、もう一度扉に手をかけたその時だった。
女子生徒
好きです! 良かったら私と付き合ってください!
理科室の中から聞き慣れない声が聞こえる。
(……え? えぇー!? な、何?)
もう一度そーっとのぞいてみると桐生君の向こう側に見知らぬ女子生徒の姿が見えた。
(まさか……桐生君告白されてる!? 相手の子、誰なんだろう)
こっそりと盗み見るが見たことのない子だ。
(それで桐生君の返事は?)
ゴクリと唾を飲み込むと桐生君の言葉を待った。
榎本先生
榎本先生
佐倉? お前こんなところで何やってるんだ?
佐倉理緒
佐倉理緒
きゃっ!
急にかけられた声に驚き跳ね上がり、振り返るとそこには榎本先生が立っていた。
私は出してしまった声にハッとして、ゆっくりと理科室の方に目を向ける。
佐倉理緒
佐倉理緒
き、桐生君……
こちらに気づいた桐生君と目が合ってしまった。
(ど、どうしよう……)
こんなところで聞き耳を立てていたとバレたらおしまいだ。
佐倉理緒
佐倉理緒
あっ、榎本先生が来いって言うからちょうど今来たとこなのに、何やってるんだはひどくないですか?
とっさにごまかす。
榎本先生
榎本先生
は? お前何言って……
佐倉理緒
佐倉理緒
今度の理科の実験の準備の手伝いしろって言ったじゃないですか!
榎本先生の話を遮るように続けて言った。
すると、榎本先生は私から視線を外し、中にいる桐生君達にも気がついた。
榎本先生
榎本先生
ん? お前ら何やってんだ?
榎本先生が声をかけるとその女子生徒はコソッと桐生君に「今度返事聞かせてください」と言って走り去っていった。
榎本先生
榎本先生
さ、もう鍵閉めるぞ
榎本先生がそう言うと桐生君はペコリと会釈をして理科室から出てきた。
榎本先生
榎本先生
そろそろお前らも帰れよ。体育祭ももう終わり、明日から気を引き締めて授業受けるんだぞ
「はい」
 桐生君と声がハモる。榎本先生は理科室に鍵をかけ、準備室へと入って行った。

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