第32話

仲間
715
2018/07/25 13:28
朝、携帯が震える音がした。
眼鏡をかけて携帯を開く。
画面には"あなた"という文字が表示されていた。
二階堂大和
二階堂大和
……ふぁ……あ?……はるか?
電話には出たものの、声が聞こえない。
何も言われないけどどうしたんだ……?
そう思っていると通話は切られる。
二階堂大和
二階堂大和
なんなんだ?
また携帯が震える。
再び通知で名前があなたと表示される。
急いでまた携帯を開く。
"今寮に向かってる"
二階堂大和
二階堂大和
……は……
上着を羽織ることもせず、靴だけは履いてドアを開ける。
まだ誰も起きてない早朝。
静かに早く出ていく。
二階堂大和
二階堂大和
ほ、んと……なんなんだよ……
走って、走って名前を呼んだ。
二階堂大和
二階堂大和
っ、あなたぁぁぁ!


·

歩いて、ようやく寮の近くに辿り着いた。
大和になんて言われるだろうか。
怒られてもいい、それでも俺は帰らなきゃ。
二階堂大和
二階堂大和
っ、あなたぁぁぁ!
あなた
あなた
(やっぱり、声が出ないよ……)
大和は大きな声で俺を呼んでいた。
本当は応えてあげたいのに、声が出ないから無理なんだ。
足を止めてしまう。
二階堂大和
二階堂大和
止まんな!
あなた
あなた
っ、
その言葉に背中を押された気がした。
再び歩く。
やっと、大和の元へ手を伸ばす。
二階堂大和
二階堂大和
ごめん……あなた
大和が優しく抱きしめてくれた。
久しぶりに感じる、誰かの暖かさ。
誰かに必要とされて大切な人がいること。
あなた
あなた
……と……やま、と……大和にまた会えた


·
小鳥遊音晴
小鳥遊音晴
いいかい?これからはちゃんと考えるんだよ?
あなた
あなた
申し訳ございませんでした。俺の甘い考えの結果こうなってしまったので……
社長と万理さんに謝りに行った。
深くお辞儀をして、再びこの事務所で働かせてくれることになった。
大神万理
大神万理
もう心配したんだからね!これからはちゃんと俺に話す事!
あなた
あなた
はい、すみません……
そばで見ていた大和がふっと笑う。

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