氷の入った袋を頬に優しく当ててくれた。
万理さんが大和と柊和を叱っている。
喧嘩腰な柊和の言葉に万理さんが反応する。
にっこりと微笑んでいるものの、万理さんが鬼に見える。
さすがに怖かったのか柊和は何も言わなかった。
やっと、こんな地獄の日々から抜け出せるんだ……
柊和に怯えながら生きる。
そんな考えもいらなくなった。
全身の力が抜けて、痛みも引いてきた。
腕を見れば所々に痣がある。
こんなに柊和に殴られたのか……
柊和は警察に行き、今まで俺にした事を全て話した。
もちろん素直に話したわけじゃないけどただ早くこんな記憶を消したかった。
傷つけられて、息が出来ないような辛さ。
この痣と共に身体に刻み込まれていくんだろう。
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警察からの事情聴取が終わり、寮に帰るともう夜は明けていた。
もちろん事務所にはいられなくなったし、デビューすら遠い話となってしまった。
玄関を開ければIDOLiSH7のメンバーが驚いた様子で迎えてくれた。
環が真っ先に俺の元へ来た。
包帯で巻かれた腕に優しく触れた。
涙も、感情さえも出ない。
空っぽの自分になってしまった。
呆然としていると三月が優しく話しかけてくれた。
重い足取りで部屋に向かう。
そういえば大和がいなかった。
大和の部屋をノックする気力もなく部屋に入った。
コートを脱ぎ、荷物を置いてベットに倒れ込む。
悲痛な叫びは聞こえない。
それから吸い込まれるように眠りについた。
何度か誰かが部屋に入ってきたけど、それも無視して眠った。
目を覚ます頃にはもう夕方になっていた。
社長がどう判断したのか、今の状態で聞くのはとても苦しかった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。