第45話

頂点
698
2018/10/08 13:09
その日はTRIGGERのライブだった。
初めて出演をプロデュースしてみると客の反応ももちろんTRIGGERの反応も良かった。
九条天
九条天
今日はありがとう!
頂点に君臨したような、そんな風に見えた。
誰もがTRIGGERを欲しがっている。
最高なTRIGGERを見たいと願っている。
舞台袖からステージに立つTRIGGERを眺める。
九条鷹匡
九条鷹匡
どうだい?これでわかっただろう。君がどれほど必要か。
全てを知っていたかのように嘲笑う九条さん。
俺はその顔が大嫌いだ。
あなた
あなた
そうですね……
だからこそ、頼らなければいけない。
あなたを超えてこの悪夢から覚まさせてやる為にも。
TRIGGERも九条さんも、きっとわかる日がくる。
八乙女楽
八乙女楽
あなた、タオルくれるか?
あなた
あなた
あ、ごめんなさい持ってきます
やがて、ライブは終わり静けさが戻ってきた。
客は家路に着きTRIGGERは反省会を行っていた。
九条天
九条天
今日のお客さんの反応はよかった。でもこの曲の部分は____
本人達にしか分からないこと、必死にメモをして次のライブに生かす。
なんでこんなに一生懸命なのかって?
決めたんだ、九条さんを超えてTRIGGERもIDOLiSH7もRe:valeも悪夢から覚まさせてあげるため。
九条さんを頼る人がいなくなるように。
あなた
あなた
お疲れ様でした、今後のライブに生かします
九条天
九条天
………俺たちと一緒に高みを目指してくれるの?
あなた
あなた
はい……俺は早くこの悪夢から覚めたいから
覚めたら大和にちゃんと言えるかな。
2人で笑いあっていられるのかもしれない。
そんな不確かな希望を持ってる。
九条天
九条天
そう、僕に協力してくれるんだね。
この醒めない夢からは永遠に抜け出せないかもしれない。それでもいいの?
あなた
あなた
それでも、いいと思えたから俺はここにいます
いつの日にか、皆がTRIGGERがRe:valeがIDOLiSH7が笑える日を。

もう誰も悲しまなくてすむように。


.
和泉三月
和泉三月
大和さん、買い物行くから着いてきてくれねぇか?
二階堂大和
二階堂大和
お、買い物か?いいぜたまには行こうかな
ある日のオフ。
本を読む大和さんを買い物に誘った。
今の心境を聞くためでもある。
いつもは小言を言って着いてこない大和さんだけどなにか考えているのか今日は着いてきてくれるみたいだ。
二階堂大和
二階堂大和
なぁ、もしも俺の気持ちを聞き出したいからだとか言ったら俺は行かない。
何も言わないで連れて行ってくれよ、ミツ……
大和さんは俺の服の裾を掴んでそう言った。
寂しそうに悲しそうに声を絞って。
足を止めることなく玄関へ向かい靴を履く。
大和さんのいる気配はする。
後ろを振り向くとやっぱり大和さんはいた。
和泉三月
和泉三月
……俺は、あんたを助けたい……なんでこんなに苦しまなきゃいけないんだよ……
二階堂大和
二階堂大和
俺は、苦しんでなんかない
その鋭い眼差しは俺を捉えた。
ゆっくりと大和さんの瞳に俺が映る。
あんたには俺が……和泉三月は敵にでも見えるか?
二階堂大和
二階堂大和
だから……言ったじゃねぇか、もうあいつの話はしないって!
普通に過ごせてんのならそれでいいだろ!
和泉三月
和泉三月
じゃあ忘れさせてくれよ……あんたを見てると、あなたの顔が浮かんでしょうがないんだ……ずっと胸が苦しい……
大和さんはあんまり感情に流されない方だと思っていた。
だけど、仲間思いのせいか引きずっているように見える。

六弥ナギ
六弥ナギ
ヤマト………ミツキ……話し声が皆さんの耳にも届いていますよ。もう少しボリュームを下げてください
ナギは怒っているのか、喋り方がいつもよりも丁寧で怖い。
ナギの背後にいる陸はすっかり怯えている。
和泉三月
和泉三月
ごめん、ついカッとなって……
二階堂大和
二階堂大和
……ごめん、部屋に戻るわ
大和さんは見向きもせず部屋に戻って行った。
ただ俺は傷つけただけで何も変わりなどしなかった。
ナギは俺を優しく撫でてくれた。
六弥ナギ
六弥ナギ
ミツキ……ワタシがしっかりしていれば良かったのですが……
その言葉に思わず胸を打たれる。
目尻が熱くなり、涙が溢れる。
こぼした涙はまだ冷たい。
七瀬陸
七瀬陸
三月……
和泉三月
和泉三月
おれっ、どうしたらいいのかわかんねぇっ、………大和さん怒らせちまった……

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