自信満々の顔と言ったところだろうか。
なにを企んでいるのやら。
一瞬、頭が真っ白になった。
そんなこと、考えたこともなかった。
ましてや母親と同じ芸能界に入り込むなんて。
きっと芸能界って苦しいんだろうなって母親を見て思っていた。
帰ってくれば、自室に篭もりたまに出てきたかと思いきや出かけて行った。
俺も同じようになってしまうんじゃないかと不安がある。
そんなに一生懸命になる大和と初めて見た。
いつも程々と言ったところの態度だったのに。
·
次の日
芸能関係の事には慣れているのか俺の入る隙もなく社長に話に行くことになった。
ノックし、ゆっくりとドアを開ける。
社長が椅子に構えて座っていた。
顔はいつもにこにこしているのに今は強ばっている。
手をぐっと握りしめた。
この自分の気持ちで今後が変わってくるんだ。
芸能界に入ればきっと、大変な事もあるはず……
でも、それでもいいかなって大和と話して思ったんだ。
深く、頭を下げた。
こんなにも人に頭を下げたのは初めてだった。
プライドの高い母親は、俺を壊れ物のように扱って外にさえ出させてくれない時が多かった。
だから、話すのだって怖いしこうして頭を下げるのも怖い。
予想外の答えが返ってきた。
勉強は人並みにはできるけど、運動がなぁ……
そんなことを頭で考えていると青い髪のポニーテールの人が出てきた。
手渡された紙には入社試験のお題が書かれていた。
1 IDOLiSH7の体験マネージャー
2 筆記試験
3 IDOLiSH7とレッスン
4 歌唱力テスト
なんて、言われて寮に戻ってきた。
入るの気まずい。
昨日なんか記憶ほとんどないし……
玄関のドアを開ける。
優しい明かりが目に入る。
ふと視界に赤い髪が写った。
靴を脱いで、上がる。
って言っても昨日もこの寮に入ったんだけどな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。