第27話

携帯
711
2018/07/03 06:26
七瀬陸
七瀬陸
や、大和さん!頑張ってください!
今、俺は最大の危機に直面している。
携帯を片手に迷っている。
電話するのかしないのか。
いやでも、するって言っただろ……
説得するために旅行に行くからって……
携帯を見つめ始めてすでに1時間は経っていた。
二階堂大和
二階堂大和
………い、行くぞ
皆はこくりと頷くと、俺の携帯に目線を集めた。
震える指で操作する。
電話をかけるボタンをゆっくり押すとプルルル……と音が聞こえた。
耳に当て相手が出るのを待つ。
四葉環
四葉環
……お願い、出ろ!
出ない事だって有り得る。
今のあなたは俺達に会いたくないはずだ。
散々皆も連絡を取るか悩んだけど結局俺しかLINEしてねぇし……
返信返ってこなかったけどな……
あなた
あなた
もしもし……
二階堂大和
二階堂大和
も、しもし?!
久しぶりに聞こえた声は疲れきっていた。
まさか出てくれるとは思っていなかったし、さっきよりも緊張する。
あなた
あなた
………あれ?大和……?
九条鷹匡
九条鷹匡
その携帯を渡してくれないか?
あなた
あなた
ごめん、切る!
その言葉と共に電話は切られた。
"もしもし"しか会話出来ず、終わってしまった。
耳から携帯を離す。
和泉三月
和泉三月
通話終わるの早くねぇか?!
二階堂大和
二階堂大和
いや……九条鷹匡に携帯取られたのか……?
和泉一織
和泉一織
どういうことですか?
二階堂大和
二階堂大和
九条鷹匡の声がした。
その携帯を渡してくれないか?ってあなたに言ってる声……
あまりにも一瞬の事で、驚きが隠せない。
やっぱり九条の所にいるのか。
そう思うと九条が羨ましく思えた。
六弥ナギ
六弥ナギ
あなた……あなたは一体どうしたいのでしょうか……
和泉三月
和泉三月
俺たちを嫌ってる様子もねぇし……
その日はあなたへ連絡する話で持ち切りだった。
結局誰が電話かけていてもあなたは出なかった。

·
九条鷹匡
九条鷹匡
この携帯は私が預かっておくよ。
IDOLiSH7からの連絡が来るからね。
あなた
あなた
でも……
九条鷹匡
九条鷹匡
……まだ彼らの事が忘れられない?そんなの、私が許さない。
俺はとんでもない人の元へきてしまったんだと今気づいた。
もう逃げられない、鳥籠の中で閉じ込められているみたいだ。

九条さんが部屋から出ていったかと思ったら天さんが部屋へ入ってきた。
どうやら仕事終わりのようで疲れていた。
九条天
九条天
だから、言ったでしょ。来るなって。
あなた
あなた
……俺、皆に謝りたい。勝手に出ていったことも今までの事も。
それなのにもう逃げ出してる。
九条天
九条天
この狭い場所から逃げて、早く行きなよ。
その言葉とは裏腹に、九条さんが腕を掴んできた。
力強く、顔も険しかった。
あなた
あなた
あ、の
九条天
九条天
いい?俺は……あんたに惚れてる、だからこれ以上俺をかき乱さないで。
あなた
あなた
へ………?
気付けば、九条さんとの距離は一気に近くなっていた。
前に動いてしまえば唇が触れてしまうぐらい。
声も出ないほど緊張してしまった。
九条天
九条天
……これ以上何か言ったら何するか分からないよ?
あなた
あなた
ち、がう……俺は……
どうしたらいい、大和。
俺は大和が好きだって言っていいのか?

悩む隙を与えず、九条さんが近づいてきた。
突き放してしまえばいいのに。
あなた
あなた
(でも、九条さんを突き放したら俺は……また嫌われる……?)

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