三月くんが頭を撫でてくる。
身長差なんて5cmぐらいだけど今は凄く大きく見える。
みんながそばにいるなら俺は前に進めるかもしれない。
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色々社長や万理さんに調整してもらいながらも五日後にはマネージャーの仕事を始めていた。
どこかに柊和がいるんじゃないかと不安もあったけれどとにかく考えないようにしていた。
一織くんには全てお見通しのようだった。
テレビ局の控え室は騒がしかったけれどそれすらもかき消されるような不安だった。
スタッフさんがIDOLiSH7の出番を伝えに来た。
今日は、レギュラー番組の収録。
IDOLiSH7も人気が出てきたこの頃、仕事は忙しくなるばかりだった。
舞台裏でモニターから様子を見ることしか出来ないけど今はそれが俺の仕事。
しっかりとしなきゃ。
その時、肩に誰かの手が触れた。
後ろを振り向くと、
いつも通り、美貌を振りまいて俺に話しかけてきた母 夢二唯愛。
俺の腕をひいて歩き始めた。
周りのディレクターやカメラマンが驚いて視線は全て俺たちに集まっていた。
俺の声がまるで聞こえていないかのように母は歩く。
力なんて本当は俺の方が強いはずなんだけど、今は親という圧力に負けている。
逃げ出したいのに逃げ出せない。
TRIGGERの九条天が俺の腕を掴んでいた。
その言葉を聞いた母は俺の腕を離しどこかへと歩いていった。
腕を組み、俺を説教するかのように言われた。
陸くんの全然違う……
優しさが違うし、なにより顔が怖い。
母は、何を考えているのか全然分からない。
小さい頃は普通に学校も行ってたし、なにより優しかった。
多分、俺が1人で行動出来るようになって息子がいるとバラされたくないから。
後ろから九条さんが誰かに口を塞がれた。
独特な雰囲気を持った男の人。
俺を見るなりにやりと笑っている。
ゆっくり近づいてくる。
この人、変だ。
目が合えば逸らすことが出来ない、圧力をかけられているみたいだ。
ゆっくり頬を触られる。
早く逃げ出したいのに、体が動かない。
名刺を押し付けられるように渡され天さんとどこかへと歩いていった。
あの人は天さんの誰だ?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。