第26話

突撃
790
2018/06/28 21:35
あなたが事務所を辞めて1週間。
テレビ局や街中で会うことはなかった。
存在自体を潜めているのか、見つけることさえできなかった。
二階堂大和
二階堂大和
なぁ……あなた……お前はどうしたいんだよ……
連絡をとってみたけれど返信はない。
わざとなのか?九条になにかされてんのか?
もやもやした気持ちが渦巻いてしょうがない。
和泉一織
和泉一織
二階堂さん……社長が事務所に来て欲しいと連絡がありました。
早急に向かってください。
ドアを開けずイチはぼそぼそ言った。
社長からの呼び出しは初めてだ。
事務所に向かうために携帯と財布を持ち外に出る。
二階堂大和
二階堂大和
さむ……
上着も薄いものしか着ていないのでとても寒い。
マネージャーにお願いして、車を出してもらえることになった。
小鳥遊紡
小鳥遊紡
大和さん、社長から呼び出しって……
車に乗り込むとマネージャーは不安そうな顔をしていた。
二階堂大和
二階堂大和
お前さんがそんな心配することじゃないから安心しろよ。
まぁ、大体何言われるか予想はついてるけどな。
事務所に着くと社長は椅子に座って待っていた。
万理さんもいてやっぱり空気は重たかった。
小鳥遊音晴
小鳥遊音晴
急に呼び出して悪いね。
少し話さないといけないことがあるんだ。
二階堂大和
二階堂大和
はい……
小鳥遊音晴
小鳥遊音晴
あなたくんの事なんだけど、彼を助けて欲しいんだ。
九条鷹匡の元へどうやら行ってるようなんだ。
二階堂大和
二階堂大和
助けるって……俺は何をしたらいいんですか
俺は何も出来ない。
手を差し伸べることも、あの笑顔に答えることも出来ない。
小鳥遊音晴
小鳥遊音晴
またここで笑顔で戻って来ること。
このままじゃIDOLiSH7の君達にも支障が出る。
それぐらいあなたくんの存在は大きいものになっていたんだよ。
二階堂大和
二階堂大和
そう、ですね……
俺だって本当はあなたの存在がいつの間にか大きくなっていた。
最初に再開した時はめんどくさい奴に会ってしまった、なんて思っていたはずなのに。
今はただ自分の中で気持ちを整理する事しか出来なかった。
小鳥遊音晴
小鳥遊音晴
……そこで1つ提案なんだけど


·
四葉環
四葉環
は?!あなたちゃんと旅行?!
社長に提案されたものは、2人で旅行に行く事。
特別に宿を予約し、準備はある程度してあるそうだった。
二階堂大和
二階堂大和
俺もさっき知らされたんだよ。
悪いけど、行ってきてもいいか?
その……これ以上皆を困らせるわけにもいかないし、あなたに面と向かって話したいんだ。
普段の俺なら断っているはずの事を今はやらなきゃって思う。
同時にあなたに戻ってきて欲しいと思っている自分がいる。
和泉一織
和泉一織
……二階堂さん、あなたさんが事務所をやめたのはあなたのせいですか?
七瀬陸
七瀬陸
い、一織……
二階堂大和
二階堂大和
……俺のせいだ。
イチの質問に答えるのはきつかった。
俺のせい、と言ってしまえばここに居ずらくなる。
思わず目をそらした。
和泉一織
和泉一織
絶対に、説得してください。
私達は……手を差し伸べるのが遅すぎた。
その手を今は九条さんが取っています。
それを奪う気でいてください。
イチは、力強く言うと大人しく席に座った。
気付けばもう夜。
ミツが晩飯を用意して待ってくれていた。
こんなにも皆がいるだけで暖かったって初めて感じる。

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