次の日、IDOLiSH7としての仕事だった。
スムーズに収録を終えて皆で寮に帰るところだった。
TRIGGERの九条天にばったり会ってしまった。
リクは喜んで九条に話しかけに行くし、他のメンバーもリクに着いていくし。
なんて考えながら、皆を待つことにした。
ふと止まったのは高級車。
芸能人か有名人なんだろうとその場をどき、離れながらも乗っている人が気になってしょうがなかった。
使用人らしき人がドアを開け、人が降りてくる。
その顔を見て寒気が襲う。
現在も活躍中の夢二 唯愛という女優がいる。
その美貌と人格で芸能界の頂点、いわば女王となったと言われてる人だ。
その夢二 唯愛の息子、夢二 あなた。
俺の幼馴染でもあってこの世で2番目に嫌いだ。
そっと目を伏せ、顔を合わせないようにした。
相手も顔なんて覚えてないだろうから。
とか思ってた俺が馬鹿だったか、すぐにバレてしまった。
母親譲りの顔立ちは男にも関わらず綺麗なあなたは俺となんて不釣り合いだ。
それも嫌いな原因の1つに入る。
しらばっくれるように俺はそう言った。
しかし、あなたを見て驚いた。
あまり食べていないのか細い腕に青白い顔。
不健康極まりない。
しかもなんでテレビ局に来てるんだ?
そんな高級車に乗って、母親にでも連れ出されたか?
力のない、返事だった。
使用人と言葉を交わすと再び俺の元へ戻ってきた。
こいつ……こんなに小さかったか?
呼吸が上手くできないのか、喉に手を当て苦しそうにもがいている。
この症状、見たことある____
リクと同じ……呼吸器系の……
なんて根拠の無い決めつけはやめろ。
ひとまず、メンバーに見えない所に移動させ座らせる。
涙目になり、苦しそうに息をし始めた。
本当はリクかイチを呼んだ方が良かったんだろうけど、めんどくさい事になりそうだからな……
そっと頬に触れると暖かい。
ため息をつきたくなるほどめんどくさい事になった。
なんであなたと今更話さなきゃいけないんだ。
昔の事を知ってる人間は嫌いだ。
立ち上がり、想を置いていこうとした。
服の裾を引っ張り俺を引き止めるあなた。
力なんて全然入ってないはずなのに動けない。
いや、動きたくないって体が反応してる。
こんな弱ったやつを置いていけばどうなるかなんて分かってる。
力尽きたのか、あなたは瞼を閉じ眠りについてしまった。
余計に置いていけなくなってじゃねぇか。
ひとまず、ポケットに携帯か貴重品が入ってないか確認する。
後ろから出てきたのはイチ。
いつから聞いてたのか……こいつ……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。