第13話

粉砕
943
2018/06/04 22:58
一織side
あなたさんは泣き始めた。
きっと大和さんと喧嘩でもしたはず。
私が慰めないと、きっと彼はこのまま1人で泣き続ける。

腰に手を回し、ゆっくり引き寄せる。
身長差なんてそんなにないはずなのに小さく見えて愛おしく思えた。
和泉一織
和泉一織
(な、なんなんですか……この可愛さは……)
しかも、ここは廊下。
いつ誰がこの状態を見てもおかしくない。
ひとまずあなたさんの部屋に戻ることにする。
和泉一織
和泉一織
あなたさん、部屋に戻って休みましょう。きっと疲れているんです
あなた
あなた
うん……
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大和side
和泉三月
和泉三月
おい、おっさん。
そんな意地張りすぎないで帰るぞ
二階堂大和
二階堂大和
はいはい、意地なんて張ってねぇよ
ミツに引きずられながらも寮に戻った。
部屋に行ってみたけどやっぱりあなたはいなかった。
和泉一織
和泉一織
あ、二階堂さん。あなたさんなら部屋に戻りましたよ。ちゃんと慰めてあげてくださいね
二階堂大和
二階堂大和
………は?
イチがなんで知ってるんだ?
あなたが部屋から出たのか?
あなたの部屋のドアをノックする。
あなた
あなた
どうした?……って大和
二階堂大和
二階堂大和
さっきは悪かった。あなたの気持ちを考えてなかったし気持ちばっかり押し付けてる……
あなた
あなた
……俺こそ、大和の気持ちに早くちゃんと気づけばよかった
大和が近づいてくる。
やっぱり恐怖がある、なにかされるんじゃないのか。
思わず、顔を逸らす。
二階堂大和
二階堂大和
やっぱ怖がらせちゃったよな。
お兄さん、近づかないようにしとく。
無理に笑う大和はそのまま部屋から去ろうとした。
何も出来ない、引き止めたって大和はきっと怒る。
何も言えないまま大和はいなくなった。
また空っぽになったように涙さえも出なかった。


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次の日
昼野柊和
昼野柊和
おはようございます
今日から柊和との仕事が始まる。
まずはライブの告知やレッスンなどする事は沢山ある。
あなた
あなた
おはようございます
大神万理
大神万理
おはよう!
今日はレッスンするからレッスン室に来てね
あんまり気乗りしないけど、これは仕事なんだから。
柊和とも目を合わせずにレッスン室に向かう。
昼野柊和
昼野柊和
ねぇ、まだ怒ってる?
昨日の事
あなた
あなた
……そんなんじゃないんだけど、あんたとはうまくいかない気がする。
その言葉も表情も嘘に見える。
昼野柊和
昼野柊和
………まだ、そんな事思ってたの?
あーあ……残念だな
悪い雰囲気が漂う。
冷や汗が出て、呼吸が辛くなる。
なにか、されるんだ。
誰かが言ったんだ、悪い事をした子には罰が下る。
昼野柊和
昼野柊和
ねぇ、あんた夢二唯愛の息子だろ。その肩書きさえくれればいい。だからバラせよ、夢二唯愛の息子だって。
あなた
あなた
そんな事、するわけないだろ……
話を途切れさせるように、急いで歩いた。
手を掴まれ力強く握りしめられた。
あなた
あなた
いっ……離せ!
昼野柊和
昼野柊和
………俺は、闇を照らす光であんたは光を探す闇って万理さんが言ってた。
いいよな、お前は尊敬出来る母親で。
俺なんか……いつまでも報われない
あなた
あなた
母なんて尊敬するもんか、俺を散々酷い目にあわせたくせに……
1度も母は俺に笑いかけてくれなかった。
全部偽物の仮面を被った夢二あなたに愛情を注いだだけだ。
柊和は腕を掴んだまま離してくれなかった。
昼野柊和
昼野柊和
お前な……
その蔑んだ目は、俺に対してなんだろう。
母を慕わない事も柊和を否定する事も全部気に入らないから。
手が大きく振り上げられ、気づいた時にはもう頬を叩かれていた。
昼野柊和
昼野柊和
なんだよ!全部甘えてるだけじゃねぇか!自分を憐れんで嬉しいか?きっと俺の痛みはお前だけには分からないだろうな!
そう、俺を罵って柊和はレッスン室へ走っていった。
俺が間違いだったのか?
母に対する思いも、今までしてきた事も。
しばらく座り込んだまま立ち上がれなかった。


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