あなたが連れ出されて間もない頃。
俺達はやっぱり何も出来なかった。
2回目ということだけあって、誰も何も言わなかった。
俺以外、もう誰もあなたを助けようとしていなかった。
希望を持つことが出来ない。
その言葉に皆顔を合わせていた。
確かに、問題はある。
本当はあなたに構っている暇などないくらいに。
ナギと一織は、ミツと同じ意見。
やっぱりこんな所でも意見がわかれちまうか。
ため息をつく。
ソウが控えめに言った。
本当はきっとこんなつもりじゃなかったはずだ。
ただ、普通に仕事をしようとしていただけで。
こんなにも人に振り回されるとあなたは思ってなかっただろうな。
タマがそんなことを言うと思わなかった。
思わず目を見開いた。
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生まれてなかったのか?
この世に生きていなかったのか?
そう思うと震えが止まらなかった。
涙が出そうになる。
その婚約者の事を好きじゃないと言っているのなら尚更。
俺は夢二唯愛と、ただの一般人の血が流れてるいらない子。
にっこり笑う母さんは、魔女のようだった。
こんな人に似たくもなかった。
優しく髪に触れられる。
長く伸ばした髪は、華奢な俺にはお似合いだ。
女になってほしいとかじゃないんだ、ただ父を思い出すのが怖くて怖くて仕方ないんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。