優しくて柔らかい声。
拓は驚いて優をみつめる。
優は拓の目を真っ直ぐ見つめて言う。
拓は嬉しくてでもどこか引っかかるような気持ちだった。
思ってもいない言葉が口からこぼれる。
本当は一緒に帰りたい。
梨々香と帰らないで俺と帰って。
そんな事を伝えたいはずなのに。
そう言いながら目をそらす優。
本当に反省しているようだった。
優の方をチラッとみる。
優はまだ目をそらしたままだ。
そう言って拓は歩き出す。
いつもより早歩きになってるのが自分でも分かった。
優のそばに居たら胸の奥が苦しくなる。
その感情にどうしても馴れない。
いつも優と別れる分かれ道。
拓は何も言わずにまがる。
小さく聞こえた優の声にさらに胸の奥が苦しくなった。
この気持ちを言葉に表すとするとおそらく「嫉妬」だろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。