4時間目が終わり、出席番号順のテストの席から自分の席に戻る。
あー…。疲れた〜。
そんなことを考えていると私とは反対に笑顔な舞花ちゃんが来た。
テストを4時間もしたのに、この笑顔…。
頭が良い人はどこまでも すごいと思う。
そう言ってシャーペンを取る。
木のようなデザインにシルバーが着いているシャーペン。
女子で持ってる人は少なそうなやつ。
もともと怜くんのだったんだけど。私のピンクのスマッシュと交換したんだよね。
まぁ。うん、こう来ると思ったよ。
へぇーっと舞花ちゃんが言うと、私の方をニヤリと見た。
うん、この感じ知ってるぞ…。舞花ちゃんが からかう前の顔だ。
予感的中。
ひょいっとシャーペンを持ってかれた。
でも。今は交換したんだし、違うと答える…はず。
あー。でも怜くんだったら貰っちゃいそう…。
まぁ。貰わないと信じてみよう。
舞花ちゃんは怜くんの方行くのかなって思ったけど。
まず、自分の班の子と話すみたい。
そういえば、怜くんどこだろう。
そう思って教室を見渡すと教室のドアに近い方のロッカーの前にいた。
テストが終わったからロッカーにものを閉まってるみたい。
そう言って話しかける。
それでさっき舞花ちゃんにシャーペンを持ってかれた事を言ってみる。
うわぁ。笑われたー…。
う、うわぁ。薄情なやつめ…!
そんなことを思いながら、一緒に怜くんの窓側まで行く。
怜くんの席に着いたときに舞花ちゃんが来た。
うわぁ、笑ってるよ!
舞花ちゃん、絶対分かってやってるよー。
怜くんは…というと。舞花ちゃんの差し出したシャーペンを受け取る。
ってぇええ。何ちゃっかり受け取っちゃってんの?!
1回、私の方を見てから笑って言う怜くん。
うわぁ。受け取ったよ!
さっき僕のじゃないって言ったのは どこの誰だよっ。
そんなことを考えてると怜くんはシャーペンを学ランの胸ポケに入れて移動する。
ええぇ。待って、それは困る。
シャーペンそれしか持ってないんだけど。ほか全部鉛筆だよ?!
そうなのだ、鉛筆は20本近く持ってきたが、シャーペンは実はそれ1本。
そして その事は怜くんも知っている。なんでかって?だってね。
私から逃げながらも言ってくる。
用もないのに教室でぐるぐると追いかけっこみたいに回っている。
で、怜くんの机に戻ってきた。
止まって こっちを笑って振り向く怜くんに少しときめいてしまう。
…うん。訂正、全然ときめいてない!
結局。シャーペンは返して貰えず、舞花ちゃんに いちゃもんをつけに行く。
そう、舞花ちゃんに言うとスタスタと怜くんの方に行く。
無言で歩く舞花ちゃんを見て、怒らせたか少し心配になる。
舞花ちゃんの心の広さを信じよう…と謎に祈りたくなる。
…と。手を出す舞花ちゃん。
いやいや、私があんなに追っかけて無理だったんだから無理だって。
えぇー、渡しちゃったよ?!怜くんっ。
私のさっきの時間は何だったんだ…。
舞花ちゃんは怜くんからシャーペンを受け取ると私に渡してくれた。
怜くんのしまったという声と私の声が重なる。
なんとも ほのぼのした給食となった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。