第17話

君のおかげ
67
2020/01/09 07:52
5時間目嫌だなぁ。












そんなことを考えながら、移動している。



私たちは今から体育館に行く。







私たちは受験生だ。




なので、体調を崩さないようにと学校側が考えたらしく
今から1時間、体育館で「食に関する指導」をやる。



体育館に行く時の廊下は ほぼ外。







屋根があって地面の色は違うが横に壁がなく塀だ。

駐車場と繋がっているので塀も無いところもある。





校舎から出て体育館のところに行く廊下にさしかかったとき。
『 ビューッ…! 』
寒い風が吹く。
中原 莉子
さっむ…!
前の莉子ちゃんが寒いと言った。



まぁ。たぶん、みんな思ってるんだろうなぁ。


ほんと、寒い。
青木 怜
あ、雨降ってる。
あなた
え、本当だー
雨が降っているので余計冷たい。
あなた
さーむーい…
青木 怜
うん、さむいなー
会話は周りをみると皆 同じ。



あーぁ。
あなた
カイロw
話が終わるの嫌だからって言葉のチョイス 間違えた〜…。




え、は。カイロって何…?!カイロって…!


私バカなの?!もっと面白いこととか、可愛いこと言えないの…?!



怜くん無言だよ…そうだよね、いきなりカイロって…。


そう思いながら横を見た。






怜くんは学ランの2つ3つ目辺りにボタンも外さずに手を入れている。








あれ…?






怜くんはいつも学ランの胸の裏ポケットにカイロを暖かいからって言って入れている。





もしかして、でも。ううん、それはない と1人で否定と肯定を繰り返す。



だって。








怜くんが私のためにカイロを貸してくれるかも…







だなんて思って違ったら嫌だから。



ガサガサと手を突っ込む怜くん。


いくらボタン外すの面倒くさくて外さない主義だからって外した方が早いんだけどなぁ。







と、毎回これを見ると思う。







ボタンとボタンの間から白いカイロが顔を出す。


あっと言って少し嬉しそうな顔をする怜くん。



可愛いなって思ってしまう私は変態なのだろうか…。




新たな疑問にぶつかってしまった。


うーん。と悩んでいると…
青木 怜
どうぞー
え…いいの?!いいの?!
あなた
やったw
慌てすぎて言う言葉と心の声が反対に出てしまった。




少し進み、ウッドデッキに着いた。


ウッドデッキとは体育館の周りを囲む廊下、見た目は縁側みたいな感じ。






木出できてるからか、先輩がそう呼んでたからか皆そうやって呼んでいる。
ウッドデッキに着くと体育館に着いてなくても上靴を脱がないといけない。

後ろの列が詰まってしまうから仕方ないんだけど、まだ脱ぎたくなかったなぁ。








上靴を脱いで体育館シューズの袋を腕にかけてる方で上靴を脱ぐ。



足をつけると、ひんやりした木の感触。







つ、冷た〜…。




寒くて冷たいなんて、もういじめだわ…。














右手には怜くんのカイロ…。





そういえば怜くん これ貸してくれたけど寒いの苦手じゃなかったっけ。






























そう思って左を見ると顔を少し引きずってる気がする怜くんがいた。


うん…やっばり苦手ですよねw










左手を怜くんに向ける。
あなた
やっぱり いいよ、申し訳ないし
青木 怜
いい〜
青木 怜
大丈夫ー
あなた
えー、でも…
青木 怜
んー
私の言葉を止めるようなタイミング。



わざとなのかな?でも。
あなた
寒いでしょ?
青木 怜
大丈夫なのー
これを3回繰り返し、最後は玲くんの勝ち。



私は怜くんのカイロをスカートの右ポケットにしまった。











体育館に着いて、体育館シューズを履きながら並ぶ。


そして、少し経ってから自分のクラスの男子と女子を通って後ろに座る。






実は先生に 昨日大丈夫だったから座らせて と頼んだのだったが失敗で終わっていた。







男子が2列になった、後ろに座る。

背が高い人に囲まれるのは苦手だったが、不思議と気にならなかった。



2つ横は凛だった。

たぶん、1時間 集会をやるとなると凛も体力が持たないから足が伸ばせるくらいまで下がってきたからだと思う。







凛の場合、床に座ってて痛いのを我慢していると気を失ってしまうのだ。


だから、凛のお尻の下には防災頭巾が4枚重ねられていた。






凛の後ろの女子と横の男子と左斜め前の男子のと凛の分だろう。





いつもなら、そういうこと考える余裕などないのだが。






今日は周りが安心して見える。









右ポケットに入れた、これのおかげかな なんて思って少しにやけてしまった。
私は今日 本当はカイロを2つ持ってきていた。



1つは使ってもう1つはその間、ポケットを温めるように。







けど、2つだけじゃ 足りなかったもしれない。











怜くんのカイロと合わせて3つ。


実は今、手を3つのカイロで温めている。







床に1つ置いて、その上に右手を置いて。



右手の甲に もう一つ。



その上に左手を置いて、左手の甲に怜くんから借りたカイロを乗せている。








まぁ。ポケットにカイロを入れとくと暑くていたくなってしまうというのもあるけど。




意外と進みが早かったのとある。







手に冷たいものが入ってきて、温かい何かが流れ出てしまうような不思議な感じ。



症状には種類があるけど、この感じが1番 危険。







ただの症候群なので死ぬことはないんだけどパニックになりやすい。


その進みが意外と早く、少し驚いたが授業は無事に終わった。




















怜くんに後でお礼を言いに行こう、そう思って体育館を出た。

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