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第4話

『ハルイチバン』 第2幕
思い出したきっかけは大したことではなかった。
夏休みの合宿のときの夜。
先輩たちとは別の部屋だが、夜中にこっそり抜け出して部長の部屋に集まった。
女子部員は10人。中高一貫なのもあって私たち中1のしたっぱから高校2年生まで丁度二人ずついる。

定番の怖い話をしているとき、一人の先輩が話しかけてきた。
確か中2の先輩だ。
「春乃ちゃんの春号の『春一番』読んだけど、あれめっちゃ良かったね!恋愛もの好きなの?」
「あ、はい!少女漫画とか好きで...。」
「そうなのか!やっぱり!『春一番』っていうからてっきりホラーかと思ったらあんなにいい話だっただなんてね!」
「...ホラー?ですか?」
「あれ?知らないの?」
突然先輩の顔が暗くなる。
あ、前にもこういうことあったな。
そこで初めて思い出した。

「あのね、この学校には不吉なことがあってね。」

先輩の話をまとめると。
①この学校には不吉なことがおこる。
②それは春一番が吹いた年は人が亡くなるか大ケガをするというものだ。
③昔春一番が吹いた日に女の子が飛び降りたらしい。その女の子が友達がほしくて、という噂もあるが真偽は科学的にもわからない。
④よって、春一番は禁句である。

「で、この飛び降りた女の子ってのがさ、春川菜乃花ハルカワナノカっていうんだけれど、同じ春って文字がついた同い年...中1の子を道連れにするらしいの。」
「そ、そうなんですか...。」
「そういえば、二ッ森さんって...」
「春。」
突然呼ばれて体がビクリとする。
後ろを振り返ると、笑顔の夏が立っていた。
「もう次僕達がお風呂だよ。」
「え、もうそんな時間?はやくない?」
「前の人たちが早く上がってるかもだしさ、ね?行こ?」
珍しく強引に夏が誘ってくる。何か変だ。
「えっと...」
先輩の方をチラリと見ると目を逸らされてしまった。
仕方がない。気まずい雰囲気は嫌いだからそのままここは夏の誘いを受け入れよう。夏の方へ振り返り元気よくこたえる。
「わかった!じゃあ荷物まとめるね。」
「うん!あ、タオル忘れないようにね。」



「ふぅー。いいお湯だったね。アイス買わない?」
「あっ!いいね!僕チョコミントアイスにするけど春は?カスタードプリンあるよ?」
「マジで!!カスタードプリンしかないでしょ!!」
カスタードプリン味。この自動販売機ではよく売られてる味でとても美味しいのだがみんななぜか食べたがらない味だ。
バニラとかはどこでも売ってるのに。
そう思いながら小銭を入れてボタンを押す。
ガゴンと音をたてて下にアイスが出てきた。
ふと割りとどうでもいい疑問が浮かんだ。
「そういえば、なんで文芸部に入ったの?」
「...え?」
夏は驚いたように目を見開く。
「だって、夏は元々音感あるからてっきり吹奏楽にでも入るのかと思ってたし、絵もうまいから入るとしたら美術部かなって思ってたから。」
「春がいたから入ったってだけだよ。」
「...え?」
「だって、毎日練習ある部活だとこんな僕には大変だし、美術部は先輩怖いから。入る勇気無いし...だから。
あっ、で、でも小説書くのだって好きだよ!そこは勘違いしないでほしいな...?」
えへへと笑う夏。アイス溶けてるよっていったら慌ててシャクシャクとアイスを食べ始めた。
夏は体が弱い。今もそうで、しょっちゅう保健室に行く。貧血はしょっちゅうだし、プールに入れば風邪を引く。雨に濡れれば熱を出す。そんなこんなで体力もないから悪循環が続いてしまっているわけだ。おまけに偏頭痛持ちでもある。
だから毎日の部活は厳しいのだろう。
その点文芸部は週一回の部活だから他の部活と比べて参加しやすいのは事実だった。
案外幼馴染みだとちょっとしたことも気にならなくなるから、こういうことを話す機会も無くなってしまったりする。そこは面倒だったりするけれど、特にお互い隠すようなこともないから腹を割って話してしまう。
「...春」
「何?」
「やっぱ、なんでもない。」
「何それー?何でもないなら呼ばないでよー!」
「ごめんごめん!」

そうして私たちの中1の日々はあっという間に過ぎ去って年越しを迎えようとしていた。

12月29日。
あの日私たちは初めて喧嘩をした。

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藤代栞奈
藤代栞奈
よろしくお願いします。 昔は夕塗という名前でしたが、なぜかログインできなくなったので心機一転して新しい名前で始めることにしました。 「突然ですが今から辞めます」などの作者でした💦 他にも桜海鏡麻さんの作品の表紙の多くを手掛けたことがありますが、現在は行っていません。 滅多に浮上しません。
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