第9話

水溜りボンド カンタ
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2019/03/28 09:04
「ねえ、カンタ?」

『……』

「カンタってば」

『んー、』



さっきから私が何度カンタを呼んでも、
私の方すら向かずにパソコンを弄り続ける


そりゃ、メインチャンネルの動画を編集しなきゃいけないからパソコンと向き合うのはいいけど、
ちょっとくらい私に構ってくれたっていいじゃん!


水溜りハウスにお泊まりに来て、
カンタとまともに話したのって昨日の夜ご飯食べてる時ぐらいだよ?


私がカンタの隣に移動すると



『ごめん、あとちょっとだから待ってて』



また私の方を見ずに言う


もう、カンタなんか知らないっ


無言でカンタの部屋を出てリビングに行くと、
トミーがケータイとにらめっこしていた



「トミー?どうしたの?」

「おお、あなたちゃん。
いやあ、次の企画考えてるんだけど、何か違うんだよなーって思って。
そうだ、あなたちゃんはどう思う?」



トミーがそういって私に企画が書いてあるケータイの画面を見せてくる


んん、面白そうなアイデアだけど
やっぱり何か違う気がする……



「ここを、もうちょっと違う物で代用とか、制限してみたら?
例えばこの家にある物だけとか、もういらなくなった捨てる物とか……」

「あ、それいいじゃん!
ここも何か違うと思うんだけど……」

「あー、そこはね……」



私が動画に出るわけじゃないけど、
カンタとトミーのことを考えながら企画を考えるのは楽しい


カンタだったらどうするんだろう、こんなボケするんだろうな、でもしっかりと企画を……


気付いたらカンタのことばっか考えてる



「……カンタと何かあった?」



トミーにも伝わっちゃうくらいに



「いや、なんでもないよ」



私はこんなにカンタのこと考えてるのに


頭の中がカンタでいっぱいなのに


やっぱり私はカンタにとってお荷物なのかな


そう考えると自然に涙が出てくる



「泣くなよ……」



トミーが私の涙を拭おうと手を伸ばした時



『待って、ダメ』



カンタが急にリビングに入って来たかと思うと、
私の手をグイッと引っ張って立たせた



「女の子泣かせんな、ちゃんと話せ」



トミーがそう言う


カンタは頷くと、
私の手を優しく握ってカンタの部屋に行った


2人で並んでベッドに座る



「カンタ、私ってカンタのお荷物になってる?
いつもいつも編集の時に声かけて、勝手に機嫌悪くして怒って。
ほんとは構ってもらいたいだけだけど、それが苦痛になってるのなら別れた方が……」

『嫌だ』



私の言葉を遮ってハッキリとカンタは言った



『俺達の動画を楽しみに待っててくれてる視聴者さんたちがいる、そのために企画考えて、撮影して、編集もしなきゃいけない。
だけど、その俺の行動の活力になってるのはあなたなんだよ。
そばにいる時はあなたの顔見て、離れてる時はケータイに入ってるあなたの画像見て、今日も頑張ろうって思えてる。
別れようなんて言わないで、俺はあなたがいないと何もできない……』



カンタはそう言うと、
私を強く強く抱きしめる


その腕が微かに震えているのが分かった


そうなの?そんなこと思っててくれたの?


私は嬉しくなってまた涙を流す



『これからも忙しくてちょっとだけしか構えない時があるかもしれない。
でも俺はあなたを見てるし、絶対幸せにするから。
お願いします、ずっと俺の隣にいて下さい』



カンタにそう言われ、見つめられ、ドキッと胸が高鳴る



「私も、カンタじゃないと嫌です、ダメです。
大変な時もカンタを支えられる彼女になるように頑張るから、ずっと隣にいさせて下さい」



私はそう言ってカンタにちゅっと短いキスをする


カンタは照れくさそうに笑った



「ねえ、カンタからもして」

『な、何を?』

「キス」

『いや、今は無理、恥ずかしい……』

「カンタ!」



私たちがそう言い合ってると、
コンコンとドアがノックされる



「ちょっと、イチャイチャしてんの聞こえてるから!
あなたちゃんから貰った企画の話あるからリビング来て!」



トミーがドア越しにそう言って
階段を下っていく音が聞こえる


2人で顔を見合わせて笑った


その瞬間に不意打ちでちゅっとカンタからのキスが降ってきた





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kasu@畑 さんのリクエスト「水溜りボンドのカンタ」でした!



たくさんのリクエストお待ちしております☺️



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