私だって、好きな人の好きな人になりたかったよ。
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side ホソク
カップ麺の蓋の上に割り箸をのせ、先に割らなければ良かったと後悔した。
微妙な隙間から溢れ出る湯気をぼんやりと眺めて、世界一長い3分間を待つ。
その時、机上のスマホにパッと映し出されたのは麗奈からのカトクの通知。
別にたこが特別好きだなんて言ったことないけどな。
「お前が行くなら行く」と打ち込んだ画面を見てげんなりし、「せっかくだし行くわ」と打ち直した。
そして、長いはずの三分後はあっという間にやってくる。麗奈のせいで。
麺を腹に流し込むように食べると、シンクにコップだけを置いて静かな家を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!