頭をシャンプーで洗い、コンディショナーを手に取る。そうしている間はすっかり鏡の文字については忘れていた。
『プスッ』
体を洗おうとボディーソープに手をかけ、押してみるが全く出る気配がない。切れているようだ。
さっきの鏡の文字はボディーソープが切れていたことを誰かが伝えようとしてくれていたのか。でもそれは家族の誰にでもありえることだった。しかし、
花乃が話してくれた内容であるならば、花乃のボディーソープは花乃以外使いませんでした。何故なら花乃は数ヶ月前から肌荒れが酷くなり、肌に優しいタイプのボディーソープを花乃だけが使っていたからです。
たとえ匂いが悪くなかったとしても花乃のボディーソープを使うなどという馬鹿みたいな真似をするのはうちの家族にはいません。花乃が怒るのは目に見えているからです。ということは、
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!