第9話

兄クロードの日常
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2018/11/29 08:00


『おいっ!やめろ!落ち着け!』
燃え上がる炎の中、俺の声が響く。しかし、その声は広がらずに炎のごおごおという燃える音に掻き消された。炎を出している張本人は俺の弟である。どうやら能力が暴走して止まらなくなってしまったらしい。いや、こんな客観的に見ている場合ではないのだ。
『やめたくてもやめられないんだよっ!!!どうすればっ...!!!!!』
焦りと恐怖の滲んだ声。ごめんな。俺には今のお前を助ける力がねえんだ。炎の力を重力ではあまり抑えることが出来ない。こればかりは水を使える奴に頼まなくてはならなくなってしまう。俺はここまで無力だったのか、と、改めて確認した。

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あの時、まだ俺に出来ることはあったはずだ。心を落ち着かせてやること。他の奴らが被害に合わないために逃がしてやること。きっとあいつも、仲間が傷ついていくのを見て、もっと焦っていたはずだ。そこまで頭が回らなかったことが、とても悔しい。頭を回せなかった自分が、とても恨めしい。これからは、何事も冷静に判断できるようにしなければならない。感情的にならないように。

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俺の周りを、平和な日常が通り過ぎて行く。つまらない。何故こんなつまらない平和な町に暮らしてしまったのか。自分が不思議である。俺であればもっと治安の悪いところへ行くのに。きっと離れられない何かがあるのだろう。自分でこんなことを言うのも変な話だが。
あいつらは何故表たちとの決戦に行かないのだろうか。いや、弟は行きたがっているのかもしれない。俺たち兄弟は戦い願望が強いところがすごく似ている。とりあえず誰かと戦っていないと気が済まないのだ。
1人。どうしても感情を制御出来ない程に怒らせたい相手がいる。何をしても冷静さを失わない。その心を壊してやりたい。あいつの弟をどうにかしてしまえば起こるのだろうか。俺であれば怒り狂っているであろう。これならいけるだろうか。
なあ?表の俺。

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