第8話

ザカオの日常
504
2018/11/29 07:57


「ゴールデンウィークだねえ。どっか行きたい?」と俺の近くにいた物怪に問う。まあ、にゃあとしか言わないのだが。物怪の頭を撫でる。ふわふわとした気持ちいい手触りだ。すると突然、物怪が玄関に向かって走り出した。そして扉をカリカリと引っ掻く音がする。なんだろう。インターホンは鳴っていないのに。不思議に思い、玄関の扉を開けた。まず入ってきたのは尻尾が2本の白い物怪だ。見覚えがある。下を向いていた顔を持ち上げる。と、そこに居たのは裏の俺だった。
「ひ、久しぶり。」
少しぎこちない挨拶を交わす。久しぶりに会ったので、どうしてもそうなってしまう。俺はこいつの顔が恐くて少し苦手である。性格は大丈夫なのだが。
「物怪、遊ばせに来た。」
「そっか。」
リビングを見るとじゃれついている2匹の物怪がいた。しかし、ここだけでは狭そうである。
「じゃあ、公園でも行こうか!」
物怪たちの耳がピンと立つ。
「行きたい」
俺たちは仲良くやっているのだ。

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どうすれば恩を返せるのか。隣に座る表の俺を見ながら考える。俺にはこいつに命を救ってもらった恩がある。今でも助けてもらった時のことを夢に見るくらい、とても大事なことだ。こいつはそのことを忘れているみたいだが。どうすれば思い出すのかも分からないのでそのままにしている。
しかし、問題はここである。敵同士である為、恩を仇で返すことになりそうなのだ。そんなこと、絶対に出来ない。シルクやンダホは普通にやりそうだが。
「なんか...難しい顔してるね。」
そう言いながら苦笑された。いつの間にか気難しい顔をしていたようだ。考えていることを察されないようにわざと取り繕った。
「あいつら、怪我とかしないかな、と思って。」
「ははっ、確かに。」
滑り台に登り、滑るのではなく、飛び降りる。などの、人間には到底なし経ない技を何度かしている。もしかしたら、能力のある俺たちなら出来るのかもしれないが。
「まあでも、怪我とかすぐ治っちゃうし、大丈夫なんじゃない?w」
「それもそうだね。w」
2人で笑い合う。もう少し、時間をかけて恩を返してもいいような気がしてきた。こいつとなら、長い間やっていけるだろう。表と裏の対決が無ければ。

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