第3話

マサイの日常
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2018/11/20 14:12
今まで、どれくらい歩いたのだろうか。ここは川の土手。
水かあ。正直、俺は水を使う能力者なのだが、水が嫌いなのだ。あの出来事がなければ大好きだったのにな。
あれはいつだったか。俺の能力が暴走して川が氾濫してしまったのだ。それだけなら落ち着けるのだが、そこで馬鹿な俺は溺れてしまったのだ。なんてばかなんだ、俺。
そう言えばだが、何故俺はこんなところを歩いているのだろうか。
んー...あっそうだ。動画を撮るんだった。今からここにシルクとンダホとモトキとぺけが来るんだった。

シ『俺たちは今日からフィッシャーズだ!』

シ『なんなんだよお前ら!?』
裏シ『お前らと戦う...お前らだな。w』

フィッシャーズ結成の地であり、決戦を約束した場所。まじで初めてあいつらに会った時は目の前に鏡でも出来たのかと思った。
俺たちはどうして戦わなくてはならなくなったのか。今、まさにそれを考えている真っ最中なのだ。
1つだけ、言いたい事がある。【裏】の俺、怖くて無理なんすけど。

*☼*―――――*☼*―――――*☼*―――――*

「おいっ、マサイっ!!どこ行ってたんだよっ!!俺を1人にするなんてどういうことだっ!!!」
ちょっと低い位置からそんなことを叫ばれた。なんでうちのリーダーはこんなに寂しがりなんだ。
ここは裏の世界。そしてここで駄々をこねてるのがリーダーのシルク。鬱陶しいが嫌いではない。では、少しだけこの裏の世界での日常を紹介しようと思う。
「聞いてんのか!?」
さっきも説明してしまったが、このふくれっ面がリーダーのシルクロード。戦うことをこよなく愛している。強いのだが仲間がいなくなった途端にダメになってしまう。超絶かまちょなのだ。最近このように俺にとやかく言ってくるのでとても鬱陶しい。やめてほしい。
「ンダホっ!聞いてくれよ!」
「...何。」
この機嫌の悪そうなこいつがンダホというやつだ。これがいつものことなのだが。本当に機嫌の悪い日は無口になるのでわかりやすい。
話を聞いていたンダホが返事をする。
「...へぇ。」
「そんだけかよぉっ!!!」
するとガチャっとドアの開く音がした。
「おじゃまします〜」
入って来たのはモトキだ。
「あっ!モトキ〜!!」
どういうことなのか、表モトキのことが大好きなのである。顔が同じなのにどういう風に見えているのだろうか。それと少し、サイコパスじみた性格をしている。人が傷ついていくのを見るのが好きらしく、誰かを痛めつける時は常に笑顔だ。本当に怖い。戦う時はモトキに近づきたくない。戦っていない時は普通なのだが。
モトキの後に続いて入ってきたのがダーマ。こいつは無口で、何を考えているのか全く分からない。長年一緒にいたのが嘘みたいである。しかし毒の事になると饒舌になる。表のダーマとの毒の話ではよく喋るようだ。やはり他人より自分なのか。あと、こいつは怒らせない方が身のためである。
「あ、モトキじゃ〜ん。ババ抜きやんない?」
そう言うのは植物使いのぺけたんだ。こいつは嘘をつくのがとても得意だ。よくあいつには騙される。ホントにやめて欲しい。酒に弱く、1杯でも酔うのだ。これで嘘をつかれたら...恐ろしい。
「それは...すぐモトキが負けちゃうでしょ。あは;」
こう言うのはザカオ。隣では物怪が鳴いている。顔が怖いくせにこの中では1番優しい奴だ。見る度に物怪に引っ掻かれているのがとても可哀想だが。表のザカオに恩があるらしく、いつもどうすれば恩を返せるか考えている。敵同士なのに。実を言うとこいつが1番ぺけに騙されている。
「あ、そんなこと言うの〜?」
「だって、モトキはすぐ顔に考えてる事が出ちゃうのに、ぺけに嘘つかれるんだよ?負け確定じゃん。苦笑」
「まあ〜、そーなんだけどね〜ww」
「む、2人して酷いなあ〜。」
頬を膨らますモトキ。自分も相当かわいいじゃねえか。
「ダーマ〜!あの2人、酷いんだけど〜。」
「......へぇ。」
ダーマ、素っ気ない返事だな。心の中では色々考えているんだろうが。
「ま〜さ〜い〜!!??俺のこと無視なのか!?」
そうだ。シルクのこと、すっかり忘れてたな。さっきまでンダホと居たはずなのに。ンダホを見るとお食事タイムだった。
うるさい日常。こいつら、戦いのことになるとすげえ怖くなる。俺もその1人なのだが。

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