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2022/01/12

第39話

Thirty-eight




園内を流れる優雅で新鮮味のあるBGMに耳を傾けていると。




ざわざわした声の中から、突然複数の小さな叫び声が聞こえた。








なんだなんだ...殺人か?窃盗?強盗殺人?








自分でもかなり頭のおかしい思考に苛まれながらその叫び声のした方向へ目をやると。




明らかに助けを求める目をしたポップコーンをふたつ抱えた紗夏がいた。








...マジかよ。なんでマスクして伊達メガネして帽子してるのにばれるん?




だからってここで私が行けばまた騒がれるやろ...さて、ここはどうするのが正解?








逃げるが吉か助けるが吉か...そう悩んでいると、決意を決めたような目で大きく息を吸った紗夏。




サナ
サナ
あなたーーーー!!!!!!!!!!








......あんたは嵐持ってきすぎや








紗夏が一思いに叫ぶと、大衆の目は私へ向く。わざとらしく後ろを向いてみてもこれから起こることは避けられないらしい。




前を向き直してみれば人集りが塊になって走りよってきて、紗夏は紗夏で人に集られて...




結局園内スタッフさんから黒ペンを借りていきなりサイン会。




いつの間にか仕事モードに切り替わっていた私は難なく差し出されるキャラクターの描かれた服や帽子にサインを描いて。




向こう側に見える紗夏は戸惑いつつもポップコーンを近くにおいて耐えているらしい。




少しづつ終わりが見えてくれば人集りも落ち着いてきて、傍から少しだけ名前を呼ぶ声が聞こえたりとするだけ。




紗夏の方は先に終わったのか私の目の前に並ぶ列が終わったと同時に申し訳なさそうに笑いながら戻ってきた。




サナ
サナ
あは...ごめんな、風で帽子飛んでっちゃって...笑
あなた
...だからあんなにちゃんと被っときって言ったのに
サナ
サナ
ごめん...で、でもなんだかんだ楽しかったやろ?
あなた
楽しい......ま、ぁそうやな...笑
サナ
サナ
...?なぁ、なんか疲れとる...?
あなた
......いや、そんなことないと思うねんけどな笑
あなた
あ、ほら。あれ乗りたいんやろ?早めに並ばんと乗れんくなるで
サナ
サナ
うぇ...あ、あかん!はよ並ばんと!走ろ!
あなた
なっ、転ばんようにな?!






...あかん、ほんまあかんわ




ついさっき...私なんて言おうとしたん?












"分かってるなら気遣わせんといて"












...こんなの八つ当たりだ。疲れてるのは私だけじゃないのに




頼むであなたの名字あなた...ほんまに、これ以上いざこざ起こしたら身体持たんでな...






























サナ
サナ
ひゃ〜...楽しかったな、久しぶりの遊園地!
あなた
まぁなぁ...ていうか、今日なんの為に外出てきたんやっけ。
あなた
もう夕方やし帰らんと行かんのに、なんか忘れてる気してならんのやけど
サナ
サナ
え.........あっ!!ケーキバイキング!
あなた
あぁ...そっちが本命やったな笑
サナ
サナ
時間は...もう終わっとる......
あなた
やらかしたなぁ...笑
サナ
サナ
...ええ。次また機会があったらあなたと一緒に行くし
あなた
いや...モモとかナヨンオンニの方がええんちゃう?あの二人1番ケーキに目なさそうやし
サナ
サナ
なわけないやろ?あの二人が目がないのは肉やで肉。
サナ
サナ
それに、あなたと行った方が美味しくなりそうやもん
あなた
そんなことないやろ笑
サナ
サナ
とりあえず...今日は帰ろ?二人でどっか食べ行ったら文句言われそうやし。
あなた
そうしよか...




気の休まらない一日を過ごした私の身体はもうボロボロで。




急遽開かれたサイン会もそうだけど、その後から紗夏が帽子やら伊達メガネやらをとっぱらって勝手に動いて。




勝手...というか、私を連れ回したの方が正しい。




もうバレてるんやし、いっそ開き直っていこうや!なんて。




そのおかげでこっちは常に愛想笑いを浮かべなきゃならなくなったわけで。




正直な所、明日以降ベッドの上から動ける気がしない。








...明日は、寝よう。誰がどんだけ誘ってきても、絶対家から出やんからな








隣で満足気に、でも少し悲しげな表情で車が動くのを待つ紗夏の隣で、そんなことを心に決めて。




夕焼けに照らされてオレンジ一色の空の下を、少しだけ早く車を走らせた。







































モモ
モモ
あなたーーーー!!!!!!!




どこかで聞いたようなセリフが、私の眠っていた目を強引に覚ます。




声の主は姿を見ずとも分かる。昨日の彼女と同じタイプの人間。




ゆっくり身体を起こそうと肘を立てると、身体を起こすことすら阻止されてしまうようで。




どこか既視感を覚えるその状況に、ため息をこぼすしか出来ない自分。




あなた
朝からなんやねん...
モモ
モモ
遊び行こ!ゲーセン!
あなた
ゲーセン...?なんでまたそんなとこに...
モモ
モモ
うちな、朝起きて一番最初に思ったんよ
モモ
モモ
あなたとプリクラ撮ったことないやん!って
あなた
...朝一からそんな事考えるってどんな頭してんねん
モモ
モモ
あれ、今日ちょっとドライ?
あなた
そんなつもりないんやけどな
モモ
モモ
まぁええやん、とりあえず行こ?
あなた
...それ、私が車出すんやろ?
モモ
モモ
まぁ...うち免許持ってへんし
あなた
無理、やだ。ていうかほんまに休みなんやから寝かせてや...
モモ
モモ
なーんーでー...一回!一回撮ったら帰るから!
あなた
無理。なんででも無理。
モモ
モモ
......じゃあ、うち今日ずっとここおる。
あなた
...は?
モモ
モモ
ええやろ?ここならあなたは休めるしうちは暇せぇへんし
あなた
いや暇するやろ、なんもないねんで?
モモ
モモ
あるやん、あなたが作曲に使ってるやつとか
あなた
...あかん。それ仕事道具やし。そんな遊ぶもんちゃうやろ
モモ
モモ
ええやんちょっとくらい。この押し心地最高やねんな〜...
あなた
......まぁそれで暇潰してくれるんやったらええわ、おやすみ
モモ
モモ
おやすみ〜、ゆっくり休んでな〜笑




部屋にいる、と決まればなんの躊躇いもなしに私の作業用デスクの椅子に腰掛けて。




作曲をしたことがないのか、私の作曲用キーボードで不協和音を奏でながら楽しそうにしているモモ。








...そんなんで遊んでなんか楽しいん?笑








勝手に遊んでくれてありがとうとも思いつつ、未だ寝足りないらしい瞼を閉じて。




不協和音どころかなんのメロディにもならないその音をBGMに、また眠りについた。