それから、私達を待ち構えていた鬼のスケジュールが始まった。
練習、練習、寝ても醒めても練習。トレーナーオンニから見せられた3分58秒が永遠と脳内再生されている。
MV撮影にジャケット撮影、そしてBlue crescentとしてのMVとジャケット撮影。
録なことにはならないだろうなと思ってはいたけど、まさかここまで忙しくなるとは思ってもみなかった。
今日もいつものように。Yes or Yes の練習を繰り返して、休憩の合間を縫って個人の新曲の歌詞を頭に叩き込んでいる。
と同時に。今私の頭の中でとある大きな問題があぐらをかいている。
つい先日のあの不可解な南の対応が、ここ最近少しずつ進行していること。
休憩中。以前であればお互い部屋の隅っこのソファに座って、適度な距離感で他愛もない話をしながら息を整えていたこの時間。
それがいつの間にか、私のすぐ隣にゼロ距離で座るようになり、私が眺めていた個人スケジュールの資料を身を乗り出して見つめている。
ただでさえ汗をかいていて暑い。加えてお隣さんからは汗を微塵も感じさせない良い香り。
まともに情報が頭に入るはずもなく、いつの間にか詰められたその距離感に頭を悩ませている。
そのせいか、個人曲の振り練習をしていた時、トレーナーの先生に軽く叱責されてしまった。理由は言わずもがな集中力の欠如。
忙しいのは分かるけど、と言われたけれど、根本的な原因はそこではない。圧倒的距離感のせい。
私的には、前より声を掛けてくれることも増えたし一緒にいる時間が多くなったのはなんとなく嬉しい...
けど、それが原因で仕事に影響が出るのは、嫌だ。
嫌だと言うか、ダメだと思うし。SunにもOnceにも、私の私生活の問題は関係ないから。
...まずは集中しないと。いくら南との距離感がおかしいったってそれを理由に練習を疎かにしたらダメだ。
南のせいだよ。
なんて、言えないしなぁ...
"じゃ、お先に"
時は過ぎ去り今は午後11時。他のメンバー達はまた明日の練習やボイトレに向けて帰宅する中、たった1人取り残される私。
カムバの翌月にまたカムバする私のスケジュールは当然キツキツで睡眠時間は1日辺り2時間取れればいい方。
そんな日々を過ごして早1ヶ月。私のソロアルバムのレコーディングも今日で最終日を迎える。まぁレコーディングが終わるだけでスケジュールが減る訳ではないのだけど。
私と同じスケジュールをこなすべくここ最近常に行動を共にしているマネオンニ。最近寝れていないのか、目元のクマは先月より酷くなった。私も然り。
レコーディングが始まるまでの数十分を、いつものように所内に併設されたカフェで過ごして。
お互いひとつため息をついて、その話題は始まった。
好きな人、ね...
もし、私の抱えるこの感情がその"好き"に該当するとするなら、一大事過ぎる。
ただでさえ一度、過去に恋愛騒動を引き起こした私がこの繁盛期に。どんな言葉を投げられるかは容易に想像できる。
その上今年の上半期には少しの空白期間。活動休止してたくせに、なんて言われたらたまったもんじゃない。
あの頃の葛藤も虚しさも努力も全部嘘じゃない。あの辛さを、恋愛にかまけてたのかなんて言われたら多分手出しちゃう。
...しかも、相手はメンバー?そんなの知られたら嫌な予感しかしない。
まだこの気持ちに確信が持ててる訳じゃないし、もしかしたらただメンバーという立ち位置からより大事な何かに変わっただけかもしれない。
...あ〜、頭痛くなってきたな
ほんとにさっさと完結させろって話なんですが、今日からちょうどテスト期間なので年内完結は多分無理ですごめんなさい┏○┓
ただ私自身が高校生のうちには書き終えたいと思っている(思ってるだけ)ので、どうか長い目で見守っててください睨んでくれても大丈夫です(?)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。