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第1話

洗濯物
66
2018/04/26 09:50
──大正時代

楠ノ城家の本家という名家であり、名誉な血筋に生まれた四人の子供。
楠ノ城 裕典と和都子の間に身ごもった四人の子のうち末っ子であり、長女である少女。
才色兼備で“楠ノ城家の宮住能姫”と呼ばれた。

名前は──
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
なゆ…
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
何でしょうか裕政お兄様??
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
…それはお前の仕事じゃない(怒)
楠ノ城 和結(くすのき なゆ)
楠ノ城家の長女であるのだが、彼女の手元、彼女の周りを囲んでいるのは山積みにされた洗濯物。
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
それは、多恵子さんの仕事だ。
お前のじゃな・い・ん・だ・よ!!
少女の頬を引っ張る、長男であり楠ノ城家次期当主の楠ノ城 裕政(ひろまさ)。
和結は抵抗しようと裕政の腕を掴むが、彼女の力では到底かなわなかった。
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
…ひぃらぁいでふ!!(いたいです!!)
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
ったく、お前は困らなくてもな
多恵子さんが困るんだ。
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
でも…!!
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
でもなんだ?
自分は“宮住能姫だから”か?
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
……!!
“宮住能姫(くすのき)”
宮に住む能ある姫で宮住能姫。
和結にとってそれは、嫌みにしか聞こえない。
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
じぶんの地位ぐらい意識しろ。
お前はもう、子供じゃないだろ?
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
でも、お兄様は私のこと子供扱いするではないですか!!
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
…フッ笑
体型から考えることまで子供だろ?笑
楠ノ城 和結
楠ノ城 和結
…っ!!
私は…子供ではありません!!
和結は階段を駆け上がり、南向きの一番明るい角部屋の自室へと急ぐように入った。
多恵子さん
裕政さま?
あまりお嬢様を怒らないで下さいね。
私は助かってるのよ~腰も痛めてね~
優しい顔で取り残された洗濯物を手際よく畳む楠ノ城家のお手伝いさん。
多恵子さん(たえこさん)は穏やかな表情で裕政に言う。
楠ノ城 裕政
楠ノ城 裕政
線引きは必要ですから…
裕政は冷たく、俯きながら多恵子さんの言葉を跳ね返した。

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