第5話

4 太宰の呪いにかかった by夢主
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2022/07/10 02:52






敦君達が袋小路に入っていった後、私は袋小路の一部の建物の屋上に上り、上から見ている事にした。
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
『密輸業者と云うのは、大概臆病な連中です、だから必ず逃げ道を作る。』
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
『ここ、袋小路ですよね?取り方が向こうから来たら逃げようがない。』
今気付いたのか。遅い。
樋口 一葉
樋口 一葉
『その通りです。』
樋口 一葉
樋口 一葉
『失礼とは存じますが、嵌めさせて頂きました。』
樋口 一葉
樋口 一葉
『私の目的は、貴方がたです。』
樋口さん(盗聴をしている間に知った)は自分の髪をお団子に結った後、携帯で誰かに電話を掛けた。
樋口 一葉
樋口 一葉
『芥川先輩、予定通り捕らえました。』
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
『芥川!?』
盗聴器の無線機からじゃなくても普通に音声が聞こえるんだけど。止めた止めた、無線機をこれ以上無駄使いするのも駄目だし。
樋口 一葉
樋口 一葉
我が主の為__ここで死んで頂きます
立派な機関銃を敦君達に向ける樋口さん。そして__





















ズドドドドドドド













盛大な銃声。それ等を全て受け止めたのは、谷崎妹だった。背中は深紅に染まり、倒れ込んだ。そして次は谷崎兄が狙われる。
樋口 一葉
樋口 一葉
健気な姫君の後を追って頂きましょうか?
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
__ッチンピラ如きが…!!
あなた
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
異能力『細雪』!!
瞬間、袋小路全体に神秘的な雪が降り始めた。突如谷崎兄の姿が消える。
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
僕の『細雪』は、雪の降る空間凡てをスクリーンに変える
谷崎兄の声であろう物が、頭の中に響く様に伝わる。
樋口 一葉
樋口 一葉
何だと?
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
ボクの姿の上に背景の風景を上書きした…もうお前にボクの姿は見えない!
樋口 一葉
樋口 一葉
姿は見えずとも弾は当たる!
両手に持った機関銃を四方八方に撃ちまくる樋口さん。しかし谷崎兄に命中した手応えは全くない。
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
……大外れ
隠れている間に後ろに回ったのか、樋口さんの背後から谷崎兄が手を伸ばし、首に掴みかかる。
樋口 一葉
樋口 一葉
うぐッッッ…!!
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
死んで、仕舞えッ!!
その時、袋小路に一人の男が入って来た。谷崎兄や樋口さん、敦君も気付いてない様だが。

よく見てみると、その男は私と面識がある人物だった。
男は___黒外套を黒の獣に変化させ、谷崎兄に斬りかかった。







ドンッッッッ












背中を斬られた谷崎兄は樋口さんの頸を掴んでいた手を放し、谷崎妹と同様、路上に倒れ込んだ。
男は、「芥川龍之介」だった。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
死をおそれよ…殺しをおそれよ…死を望む者、等しく死に、望まるるが故に…
ゴホッゴホッと咳き込む『芥君』。
倒れた谷崎兄を斬った黒い獣が、元の形に戻る様に芥君の背に集束していく。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
お初にお目にかかる、やつがれは芥川。そこな小娘と同じポートマフィアのいぬ
芥川 龍之介
芥川 龍之介
ゴホッゴホッ
樋口 一葉
樋口 一葉
芥川先輩、ここは私一人でも__
芥君は自身を気に掛ける様に話す樋口さんの顔をいきなり躊躇なく平手打ちする。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
人虎は生け捕りとの命の筈!片端から撃ち殺してどうする、この役立たずめ!!下がっていろ!
樋口 一葉
樋口 一葉
…済みません……
悲しそうに、無力な自分を責める様に力なく謝罪する樋口さん。
あなた
中島 敦
中島 敦
人虎は生け捕り?……あんた達は、一体…
芥川 龍之介
芥川 龍之介
元より、僕の目的は貴様一人なのだ、人虎
芥川 龍之介
芥川 龍之介
そこに転がるお仲間は、云わば貴様の巻き添え
中島 敦
中島 敦
中島 敦
中島 敦
…僕の所為せいで、皆が?
明らかにショックを受けた敦君の声は震えていた。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
然り、それが貴様の業だ、人虎
芥川 龍之介
芥川 龍之介
貴様は生きているだけで周囲の人間を損なう
中島 敦
中島 敦
……僕の、業
敦君が狼狽えている間、芥君は異能を発動する。芥君の異能『羅生門』が黒獣と化し、敦君を襲う。辛うじて避ける敦君。



黒獣が通ったアスファルトの地面は、まるで巨大な彫刻刀で削り取ったように抉れている。その跡を見て敦君は小さな悲鳴を漏らす。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
勿論、今のはわざと外した
芥川 龍之介
芥川 龍之介
だが僕の羅生門は悪食あくじき凡百あらゆるものを喰らう
芥川 龍之介
芥川 龍之介
生け捕りが目的だが抵抗するならば、次はお前の足を奪う
中島 敦
中島 敦
何故…どうして僕が…
恐ろしさからか、その場に座り込む敦君。この程度でポートマフィアに背を向けるなら、大した相手じゃないな。新人探偵社員ならこんなものなのかな。


それにしても、莫迦ね、敦君。だ谷崎兄妹の二人共、微かながらに息がある。今の内に処置をすれば助かる可能性が高いのに。もどかしいね。
中島 敦
中島 敦
うおおおぉぉぉおおお!!!
突然、敦君が自分を奮い立たせるかの様に雄叫びを上げた。叫びながら芥君に向かって走り出す。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
玉砕か、つまらぬ
芥君の背後から再び黒獣が出現し、敦君を襲う。
あなた
瞬間、敦君は素早い動きで体勢を低くして攻撃を躱し、黒獣とすれ違う。勢いのまま、芥君の背後にまわり、先程樋口さんが落とした機関銃を構え芥君に連撃する。中々善い動き。でも、未だ未だね。

芥君にそんな攻撃は綿を投げるも同じ。
芥君に命中したように見える弾丸は、軽い音を立てて地面に転がる。
中島 敦
中島 敦
!?
芥川 龍之介
芥川 龍之介
今の動きは中々良かった、しかし所詮は愚者の蛮勇ばんゆう
芥川 龍之介
芥川 龍之介
云っただろう、僕の黒獣は悪食、凡百あらゆるものを喰らう
芥川 龍之介
芥川 龍之介
銃弾が飛来し着弾するまでの”空間そのもの”を喰い削った。槍も炎も空間が断絶していれば、僕までは届かぬが道理
話を聞いて、絶望する顔を浮かべる敦君。当然だ、それでは攻撃の仕様がないのだから。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
そして僕、約束は守る
芥君は先程の約束通り、黒獣で敦君の右脚を喰い千切ちぎった。

少し遅れて敦君の絶叫が袋小路に響き渡る。だが、死体の山の中で暮らしてきた様な私や芥君なら、この程度の絶叫はえの鳴き声も等しい。
中島 敦
中島 敦
ああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!
あなた
((ここまで、かな))
敦君はきっとこのまま芥君に殺される。唯一動ける敦君が居なければ、谷崎兄妹もじきに出血死する。都合良く探偵社の誰かが救出に駆付けるとも思えない。

とんだ期待外れだった。もう少し何か面白いものが見れると思っていたのに。
芥君が倒れた敦君に背を向けて歩き出す。
あなた
……!!
突如、敦君が視界から『消えた』。辺りを見回すと、壁に何かが張り付いていた。

それは、『虎』だった。
正確に云えば、それは普通の虎ではなく、敦君が虎に変化していた。虎の体毛の色は白。つまり『白虎』だ。




























太宰に逢ったのは災難だったけど、次に善い事が私に回って来た。ドス君が私に命じた白虎の少年の捜索及び、監視は上々と報告出来そう。
あなた
我が主に、善い手土産が出来たわ
私が呟くと同時に、白虎は芥君に襲いかかる。芥君は決して動じず、異能力を発動させ白虎の胴に傷を付ける。
あなた
然し、傷を付けられた白虎の胴は、みるみるうちに再生した。
樋口 一葉
樋口 一葉
芥川先輩!
芥川 龍之介
芥川 龍之介
退がっていろ、樋口
芥川 龍之介
芥川 龍之介
お前では手に負えぬ
芥君がほんの少し会話をしただけで、あっという間に白虎は芥君に接近する。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
はやいッ







ドォオオン








白虎は衝突し、芥君を壁に突き飛ばした。芥君が衝撃で吐血する。
樋口 一葉
樋口 一葉
おのれ!
樋口さんが仇討ちの様に白虎に向けて銃を撃ちまくる。
あなた
((再生能力があるンだから無駄なのに…))
銃弾の雨を浴びせられても平然としている白虎。当然だ、元々銃弾をからだに通していないのだから。

銃の所為せいで樋口さんに意識を向け、今度は樋口さんに襲いかかる白虎。
樋口 一葉
樋口 一葉
__っ
芥川 龍之介
芥川 龍之介
何をしている樋口!
白虎が樋口さんと接触する寸でのところで、芥君が白虎の胴体を真っ二つにして阻止する。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
ち……生け捕りのはず




























谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎
…『細雪』……!
が、芥君が胴体を斬った白虎は谷崎兄の虚像。予想外の連携。

そして白虎は芥君の背後から姿を現す。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
『羅生門   ムラクモ』_!!
芥君の大技と白虎の渾身の一撃が交わる_











































































































__はずだった。














































































太宰 治
太宰 治
はぁーいそこまでー
芥川 龍之介
芥川 龍之介
あなた
!………糞が
間一髪の所で太宰が双方の異能を無効化し、戦闘を強制終了させた。
…矢っ張り今日はついてない日だ。太宰の呪いにでもかかったかも知れない。
今日は一段と割に合わない仕事だった。白虎の少年の情報を手土産にしても、一日に二回も太宰と遭遇(逢ってない)するなら減点マイナスでしかない。







樋口 一葉
樋口 一葉
貴方探偵社の_!何故ここに
太宰 治
太宰 治
美人さんの行動が気になっちゃうたちでね、こっそり聞かせて貰ってた
そう云い外套の懐から盗聴器とヘッドフォンを取り出す太宰。大方、樋口さんが探偵社内に入った時に何らかの方法で仕込んだのだろう。その位太宰にとっては造作もない。
樋口 一葉
樋口 一葉
では最初から、私の計画を見抜いて
太宰 治
太宰 治
そゆこと
太宰 治
太宰 治
ほらほら起きなさい敦君、三人も負ぶって帰るのいやだよ私
あなた
樋口 一葉
樋口 一葉
ま…待ちなさい!生きて帰す訳には…!













芥川 龍之介
芥川 龍之介
くく…くくく




芥川 龍之介
芥川 龍之介
めろ樋口、お前では勝てぬ
樋口 一葉
樋口 一葉
芥川先輩!でも!
芥君は軽く咳き込みながら云う。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
太宰さん今回は退きましょう、しかし人虎の首は必ず僕らポートマフィアが頂く
太宰 治
太宰 治
なんで?
太宰はきょとんとした様に芥君に問う。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
簡単な事、その人虎には__
芥川 龍之介
芥川 龍之介
闇市で七十億の懸賞金が懸かっている、裏社会を牛耳って余りある額だ
太宰の前職を中てた際の七十万、敦君の首の七十億。きっと凡てを仕組んだのはドス君だろうが、その額の差は一目瞭然だ。
太宰 治
太宰 治
へえ!それは景気の良い話だね
芥川 龍之介
芥川 龍之介
探偵社にはいずれまた伺います、その時素直に七十億を渡すなら善し、渡さぬなら_
太宰 治
太宰 治
かい?探偵社と?良いねぇ、元気で
途端、太宰の顔が意味深気な笑みに変わる。
太宰 治
太宰 治
やってみ給えよ__やれるものなら
樋口 一葉
樋口 一葉
…ッ   零細探偵社ごときが!我らはこの町の暗部そのもの!傘下の団体企業は数十を数え、この町の政治・経済のことごとくに根を張る!たかだか十数人の探偵社ごとき_三日と待たずに事務所ごと灰と消える!
樋口 一葉
樋口 一葉
我らに逆らって生き残った者などいないのだぞ!
太宰 治
太宰 治
知ってるよその位
太宰は頭を掻きながら当然の様に云う。
芥川 龍之介
芥川 龍之介
しかり、他の誰より貴方はそれを悉知しっちしている








芥川 龍之介
芥川 龍之介
__元ポートマフィアの太宰さん
呼ばれた太宰は感情の読み取れない笑みを浮かべた。

これ以上この場に居ても何も意味がないので、早々に立ち去る事にした。白虎の少年の情報を手土産に__。


私は_、その場から




















































太宰 治
太宰 治
……厭な予感がするねぇ……
























********あとがき********


低浮上超えてほぼ無浮上と化した作者です。どうもお久しぶりです。
やっと書けた。やっと。うん。





それだけです。