懐かしい匂いがする。
大好きなあの人の匂い。
ジョングクという存在がありながら僕はまたテヒョンを思い出してるのか。
そんな自分を責めたが、これが夢などではないことに気づくのにそう時間はかからなかった。
テヒョンは1度驚いた顔をしたが
優しく「愛してる」と呟いた。
なんで今更そんなことが言えるの?
僕は早くテヒョンを忘れようって
頑張って
頑張って
テヒョンは別に愛してる人がいたんじゃないの?
人を軽く見ないで
なのに……こんなにテヒョンのことを最低だと思っているのに突き放せない。
僕の手は自然とテヒョンの背中に回っていた。
駄目なことくらい分かってる。
それでも…
扉の前で初めて見るような顔をしているジョングクが立っていた。
次の瞬間ジョングクはテヒョンのことを殴った。
ジョングクの手がもう一度高く上がる。
別にジョングクよりテヒョンがいいとかそういう思いで止めた訳じゃない。
ジョングクにこれ以上僕のせいで何も失って欲しくない。
ただそう思っただけ
ジョングクは1度も振り返らず医務室を出ていった。
僕は泣くことしか出来なかった。
どっちを愛してるなんて今の僕には分からなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!