車に乗って音楽を聴きながら、いつもと変わらない街並みを眺めて…
大きな看板。でかでかとした広告は、深海のように深い青色で埋め尽くされていた。
何が伝えたいのだろう、今時はこんな広告もあるのね。
まるで…まるで今の私みたい
いっそのこと、あの青色のように深い海に沈んで行きたいよ…
地平線に暮れなずむ緋色。
もう少しで夜になる…昨日とは違う、1人ぼっちの寂しい夜。
むしろ今はこれでいいの
お願い、もう私を照らさないで。月の裏側に隠してよ……
マネージャーさんも、きっと分かってて私に話しかけないんだろうね
気まずい沈黙がクドく感じるけど、話しかけられたところで…って感じだから
今はこれでいい。
鼻歌を口ずさみながら、外を眺めていると気がついたら自宅前についていた。
ガチャッ
昨日、ビョリは私と同じここにいて
玄関でハグをした。キスをした。
思い足取りで部屋に入る。
そう、昨日ここでご飯たべて
ビョリの笑顔を眺めて
洗い場で些細なことでぶつかって
結局、ソファーに行って仲直りしたんだっけな
私はそこで1人でご飯をたべて
通知が鳴り止まないスマホから逃げるように置いて
誰にも邪魔されず食器を洗って
1人で広々とソファーを独占してる。
ビョリ、いつもこんな気持ちなのかな
私が今ビョリの匂いを嗅いで安心するように、
ビョリも私の匂いで……興奮、するんだっけ
気持ちは分からなくもないかもしれない。
ビョリの匂いが染み付いた毛布を嗅ぎながら、気が付いたら私の右手はパンツの中にするすると入っていった。
もちろんビョリのほうがいいけど
ビョリの手つき、身振りから目つき、私を呼ぶ声、囁き…
細かく昨日の記憶を辿って、ビョリが触ったところをなぞるようにクリクリといじる
どんどん足先から感覚がふわふわとしてきて、
自分でするときは自分の好きなようにできるからもう限界がきていた
そろそろ…そろそろ…っ
プルルルルルッ
プツッ
おかしいと思わない?
私の気のせい?
だって、もう、電話切るときに愛してるの言葉も聞かなくなったよ今や…
どこに行ったんだろう。
途中だった事も今更やる気にならなくて、私は全てを誤魔化すように布団に入った。
どこからだろう。
聞こえてくるクラシックの音楽。
オルゴールで仕上げたのがまた、私を憂鬱にさせるよ。
もういい。悩むのにも疲れたよ。
目をつぶって、朝を迎えた頃にはどうせいつも通りなんだから
こんなことに労力使わないでおこ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。