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※暴言や乱暴な描写があります。苦手な方は素直に眠りましょう。
これは私たちの馴れ初めの話。
私サイドの話聞くのは珍しいんじゃないかな?
うん、その通り普段は話さないよ。
ただ、今日は気分がいいんだ。
空に低く浮かぶ月と星を見るとあの日を思い出すから……______
そう話すのは私より一つ年上のソラオンニ。
年上のくせして年上らしい顔なんて何一つしない、私のべびたん。
いつもはうるさすぎるくらいに明るく振る舞う彼女が、珍しくバッド入っててさ。
なんてゆーか、あんま好きじゃなくて。
ほら、キャラ被りじゃん?(?)
てのはつまらない冗談だけど。なんだか弱ってる彼女のテンションが妙で。
あんまり、好きになれない。
冷たい態度で返すけれども一応話は聞く。
素直じゃないだけでしっかり心配はしてるのよ。こう見えてソラオンニのことは愛してるから。
"メンバー"としてね。
たったそれだけ?
器の小さい男だなぁ。そんな男に構ってるだけ時間の無駄だし…
ソラオンニが勿体ないでしょ。
私の態度にカチンときてる。
ソラオンニの顔を見ればわかる。
あぁ…癪に障る。
イライラするの。
その対象は
価値のない男でもあるし、
鈍感なアンタでもあるし、
素直になれない私でもある。
口下手に話す私に内容が伝わらなすぎて飲んでた水を口から下品に垂らすソラオンニ。
私はソラオンニの目を見据えてハッキリと言い放つ。
私は次から次へと怒り口調でマシンガントークを展開して、ソラオンニを圧倒する。
最初はこんな私に驚いてたソラオンニも、調子を取り戻したのか意味深な笑みを浮かべてこう言った。
そう言い捨てるとソラオンニは私の焼酎瓶を手に持って一気に飲み干す。
そう言って私の腕を引っ張り、居酒屋を出てキャッチやスカウトがうじゃうじゃ沸く汚い繁華街をすり抜けていく。
ソラオンニの剣幕にやられて勢いに押された私は舌打ちをかます。
そして空元気振りまくオンニと腕を絡ませると、ほぼアルコールの味しかしないショットを飲み干してあまりの臭さと後味の悪さに吐き気を催す。
食い気味でそう答える私にふにゃっと笑いかけると、ダンスフロアに行き唐突に暴れだす。
ついていけなくなった私はダンスフロアでひとり舞い踊るオンニを席から静かに眺めていた。
はぁ…かっこいいなぁ。
普段冷たい態度をとってるけどなんだかんだ、オンニに惚れてる。私。
なんていうんだろ。恋じゃないんだよ。でも恋なの。伝わる?
あの人の眼差し、表情、仕草、スタイル…
踊り方、勝気な性格、笑顔…全てに魅入られてる。
参ったよ。ほんと。あの人以外見れなくなったんだ。
落ち着かない心の音も、頭の中をぐるぐると駆け巡る考えも、眠れなくなる夜があることも、
全て、あの人のせいなの。
みんなは私を遊び人だという。
そこらの女の子が私を見れば、尻尾を振るなり猫撫で声で可愛く振る舞うだろう。
私はひと味違うコを探してたから悪いけど貴女らに用はなくて。
まるで空にでも落っこちるような衝撃がほしくて。
でもああして自分の世界にのめり込むあの人を見ると、ほんと素晴らしい以外の言葉がでない。
初めて出会ったときには目を見開いてしまったくらい。
あの人が右へ左へと動き出せば、私はもっとほしくなる。だから
そのままでいて。
私が声をあげてしまう、その時まで。
歓声が止まらない。
このステージは全てソラオンニのもの。
一度ステージに立てば、彼女は全てモノにしてしまう。
ソラオンニはとても愛らしい人だけれども
実は毒でもあると感じる時がある。
今も周りに人だかりができて男の顔がうっとりしてるのがわかる。
すごくセクシーだし魅力的だもんね。でもやめときな。
彼女はイカれてるから。
気もないのに愛を囁くような子よ。それで何人の男を泣かせてきたのさ。
まったく、クレイジーな子なの。
今もどこかで泣き言言ってクラブを出てく男がいるんでしょうね。
まぁ、私だってそんな時代があったよ。
でもこうして隣にいられるのは
私の持つ感情は、恋じゃなくて憧れだから。
だからどんなに恋をしたって止めはしないよ。
そんなのオンニの自由。友達の私に束縛する権利はない。
ただ今みたいにソラオンニの後ろに突っ立ってベッドインを狙うような…ね
そんな男たちだけは許せない。
軽く見ないでよ。私のソラオンニを。
ソラオンニの腕を引っ張ると、優しく手を取りエスコートしながら右へ左へとステップを踏む。
こんだけイチャこいても分からないなんて、この男は頭が弱いの?
これだからモテる女は…
癪に障る!!!!
なにケツ触ってんだよ
この発情期の雄犬が。
間一髪のところでソラオンニと位置を変えたからオンニは何もされずに済んだけど
私のお尻を鷲掴みにする男
下心があってソラオンニに近づく男は誰だろうと許せない
ギロッと男を睨みつけるとバツが悪そうにしてその場を去っていった。
クラブを出る時も私はオンニの手を握ったまま。
捕まえたタクシーの後部座席に乗り込み、運転手さんに行き先を告げる。
疲れ切ったオンニは私の肩に寄りかかるや否や、静かに眠りだす。
そう。こーゆーところ。
ソラオンニは強い女だ。
でも、妙に無防備な瞬間がある。
いつだってすぐに臨戦態勢に入れるから、といってこんな寝顔を見せられたら男たちはたまったもんじゃないだろうな。
だから私はオンニの隣にいるの。
大好きな親友を守る為に。
自宅前につくと、優しくオンニを起こし支払いをして部屋に入る。
なんだかんだ横になって寝る態勢に入るソラオンニを、ベッドサイドに腰掛けて優しく撫でる。
こうして私だけにしか見せない姿を見ると妙な気分になる。
混沌としてる私の心が
癪に障るんだって…
無意識に出た言葉にお互い驚き、
また自分の口下手さに慌てふためく。
ソラオンニと目が合わせられない。
やっと素直になれたのに、なんでこんなときに…
でもソラオンニは私の手を握ってくれている。
本当に辛いのはソラオンニなのに、なんで私がこんな弱っていくのよ。
最低…
とんとん、とソラオンニが寝てる横の間スペースに合図をして私もベッドに入る。
するとソラオンニは私を優しく抱きしめ包み込んだ。
オンニはそういうと苦笑いを浮かべた。
そんな笑みをみて、私の中に良くない考えが駆け巡る。
そんな…私たちは友達なのに
友達だけど…
お互い愛し合ってるのに、キスも出来ないなんて…
誰も理解してくれないのはわかってる。
それでも隣にいる彼女を求めてる自分がいる。
彼女の名前を呼ぶと、一瞬にして悲しい雰囲気はどっかに消えて眩しい笑顔を見せた。
そう。その顔よ。このキムヨンソンよ。
いつものお調子乗りなアンタが恋しかった。
そういってまた私を強く抱きしめるが、照れ臭くなった私はソラオンニを押し返す。