さ「俺は違う、俺はうらさんに最低なことした奴とは違う!うらさんに自分は汚れたなんて言わせた奴とは違う! …一緒やないよ、俺は『坂田』だよ。っ…うらさん…」
そういう坂田の声は震えてて
俺を抱きしめてる手も微かに震えてて
段々俺の肩は濡れていって
俺は
俺は何をしてたんだろ
目の前にいるのは確かに坂田なのに
なんであんな奴と坂田を重ねてしまっていたんだろう
まだ震える手で、そっと坂田を抱きしめてみる
う「…ふっ、ぐすっ…うぅ…さかた、さかたぁ…」
俺を犯した奴も坂田と同じ人間なのに、違う
もう何度も何度も泣いて涙が枯れるくらい泣いたはずなのに安心からさっきのものとは全く違う涙が溢れた
全然苦しくない
名前を呼ぶと、壊れ物を扱うかのように触れられていた手がギューっと強く強く抱きしめられた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!