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第2話

2話
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2018/03/01 10:09
夏休みに俺の転校前の学校、星稜高校との合同合宿3泊4日を
行うことになった若杉第三高校の陸上部。
俺は…正直最初は、あまり気が進まなかったが…昔のメンバーと
会えるのはやはり楽しみだった。
里奈ともあれからちょくちょくと連絡を取るようになり
昨日も電話をしていた。
TEL
里奈『一哉?今年の予選でるの?』
一哉『え、なんで?…出ると思うけど…』
里奈『そっちの予選いつ?』
一哉『合宿の前日』
里奈『嘘!?』
一哉『本当だよ?前日に予選やって…常連高校の星稜と
合同練習をするわけですよ』
里奈『なるほどね…皆、私達のこと知ってるのかな』
一哉『さあね…でも、まあ俺も楽しみにしてるから…』
里奈『一哉…絶対負けないからね…また2人で雄介のところへいこうよ』
一哉『…………あぁそうだな』
里奈『あ、そろそろ寝るね…じゃあ』
一哉『わかった。じゃあ』


その翌日…俺は転校初日に仲良くなって、今では大体一緒に行動をしている、櫻井七海、橋本玲香、北野優翔と今日も昼飯を食べていた。

玲香『一哉のさ?仲間ってどんな人が多いの?』
一哉『んー…一言で言うと…うるさい…かな』
七海『なにそれ!』
優翔『うるさい…か…七海がたくさんいる感じ?』
一哉『あ、そうそう。教室の七海がたくさんいる感じ』
玲香『あらら、それは大変だこと…』
七海『ちょ…皆酷くない!?』
一哉『まあまあ、冗談だよ…でも皆賑やかだよ』
玲香『楽しそうじゃん~仲良くなれるかな~』
優翔『いいなぁ…俺も合宿つれてってよ』
玲香『優翔はサッカー部のエースでしょ!(笑)こっち来たら
サッカー部が弱くなっちゃうし…合宿なんか行ったら…
真冬に怒られるよ~』
一哉『え、なんで怒られるの?』
七海『あ、そっか、一哉は知らないんだもんね!優翔はマネージャーの真冬ちゃんと付き合ってるんだよ~』
優翔『いや、わざわざ言わなくていいから!』
一哉『あ、玲香が言ってた彼氏って優翔のことなの!?』
玲香『え、そうだよ?言わなかった?』
一哉『いや…初しりなんですけど…』
優翔『え?何の話?』
玲香『一哉がね、昨日真冬を口説いてたの』
優翔『はぁ?』
一哉『玲香!!だから違うって!』
??『そうだよ~玲香、冗談って言ったでしょ~?』
いつの間にか背後に真冬がいた。
優翔『噂をすればなんとやら…』
一哉『あ、真冬さん…もっと強く玲香に言って下さいよ…』
玲香『真冬、どうしたの?…彼氏に会いに来た?』
真冬『いや、私の目的は西野君だよ。サッカー部のこと考えてくれたかな~?って』
優翔『あ!真冬!お前適当なこと言いやがって…一哉は陸上部入ったんだぞ?』
真冬『え~!そんなぁ!…入ってくれると思ったのに…』
一哉『いや…まあ色々ありまして…』
優翔『一哉はインターハイ出場高校が出身だから、サッカー部には入らなかったんだよ…まったく…』
七海『真冬ちゃん?その手に持ってるものは?』
真冬『あ、入部しないって言われたときは賄賂でも送ろうと思って…優翔から西野君はコンビニですませてるって聞いたからお弁当…
だけど入部済みなら…優翔にあげる』
玲香『いや、普通優翔に作ってくるもんだから!』
一哉『賄賂って…この人なんなんだ…』
優翔『わりぃな…一哉…こいつはこういう性格だから…きにすんな』
七海『あれ?玲香…あれって陸上部の中村美波じゃない?…1年の』
俺達は七海が指差す方を見ると…そこには確かに中村真春がいた。
玲香が真春のところまでいって話を聞いている。
玲香『一哉~真春が話があるんだってよ?』
一哉『え、俺?…なんで?』
俺はそう思いながらも呼ばれたので入口まで歩いていく。
一哉『んで…俺になんか用?』
美波『あの…』
真春『私が代わりに言おうか?真春』
美波は黙ってうなずいた。
玲香『一哉、短距離めちゃ速かったでしょ?』
一哉『いや…だから…』
俺が否定しようとすると玲香に睨まれたので…
一哉『ま、まあ…』
玲香『で、男女じゃ体の作り違うから難しいとこあるかもしれないけど、教えてほしいんだってさ…速くなる方法?みたいなのを…
そうなんだよね?真春?』
真春『はい…』
一哉『え…いいけど…』
玲香『…けど?何?』
一哉『真春ちゃんのフォームを見てると…直すところは結構あるし…結構厳しいこと言うかもしれないけど…それでもやる?』
真春『え………で、でも速くなりたいので…お願いします…』
玲香『だってさ?どうする?一哉』
一哉『まあ…覚悟があるならいいよ…』
俺がそう言うと真春は嬉しそうに
真春『はい!!お願いします!…玲香先輩ありがとうございました!』
真春はそういいながら走り去って言った。…途中でコケながら…。
一哉『まず…あのコケるドジさというか足腰の弱さを何とかしないとね…』
玲香『入部してまだ3週間ぐらいなのに…後輩に頼りにされるなんてやるね…さすが一哉』
一哉『とりあえず…厳しさは抑えるけど…どーなるかな』
俺と玲香はそう話しながら皆のところへ戻った。
優翔『どうしたの?その…真春ちゃん?って子』
玲香『一哉に弟子入りしたいんだってさ。教えてくれって頼みに来てたの』
七海『うわ!3週間ぐらいで弟子ができるって…すごいね…』
優翔『わかったか?真冬…これが一哉の実力』
真冬『むう…わかったよ…でも、いつでも転部まってるからね!』
そこでチャイムが鳴った。
真冬『あ!やばい!次体育だ!…じゃあね!優翔!西野君!』
皆『ばいばーい~』
優翔『俺達も授業の準備しなきゃな~』
俺達は自分の席にもどって授業の準備をした。
七海『あ!!生物の教科書忘れた…』
一哉『いいよ…見せるよ』
七海『さっすが~!一哉ありがとうー!!』
七海は俺にハイタッチを求めてきたので俺はハイタッチで返した。
まあ…いつも通り七海はクラスでは初日の帰りに見せたような
大人っぽいとうか大人しい一面は見せないのであった。
いつかチャンスがあれば聞いてみたい…。


そして…その日の放課後
部活が終わり各自でバラバラに帰っていく部員達。
俺も片付けをしていると…真春が近づいてきた。
真春『あ、あの…西野先輩…』
一哉『ん?あぁ真春ちゃん…やる?』
真春『は、はい!お願いします!』
一哉『ちょ、ちょっと待って?その雑誌はなに…?』
真春『え?雑誌…?…これはノート…あーー!!間違えた!!』
一哉『ね、寝ぼけてたの…?』
真春『恐らく…』
一哉『まあいいよ…じゃ、この紙使いなよ』
俺はそう言いながらノートを破って渡した。
真春『え!いや、でもそれじゃあ…』
七海『真春ちゃん~貰っときなよ?』
振り返るとそこには帰ったはずの七海がいた。
真春『櫻井先輩!?帰ったんじゃ…』
七海『私だって速くなりたいからね…自主練のついでに
一哉に教わろうと思って』
真春『そーなんですか?……じゃあ、西野先輩お願いします!』
七海『頑張ってね?西野…先輩!(笑)』
一哉『じゃあ、とりあえず100m走ってみて?』
真春が言われた通りに100m走る。
真春『先輩!どうでした…キャッ!』
真春が綺麗に転ぶ…。
一哉『だ、大丈夫?』
真春『は、はい…大丈夫です…』
一哉『それが1番遅くなる理由かな…』
真春『え?』
一哉『足腰が弱いんだよね…太股の筋肉というか…』
真春『なるほど…どうすれば…』
一哉『とりあえず…ウェイトトレーニングだよ』
真春『え、それって重量挙げとか…の…ですか?』
一哉『そう。レッグプレスっていうやつとか…』
真春は俺が言うことを真剣に書き留めている。
一哉『これはすぐ慣れるけど…体力がまだ少ないね』
真春『う…はい…』
一哉『まあ、焦っても仕方ないから…トレーニングメニューだけ言うから…できるだけ毎日やってみて?』
真春『わ、わかりました!』
俺は彼女に一通りメニューを伝えた。
一哉『星稜行くと結構厳しいから…体力ないと死ぬよ』
真春『えー!……が、がんばります…』
俺はその日の練習を終えて七海に声をかけた。
一哉『七海?俺達帰るけどどうする?』
七海『え、もう?…じゃあ私も帰ろうかな…あ、待って!
一哉400m勝負しようよ!』
一哉『え!?なんでよ…』
七海『星稜の実力体感してみたいの』
真春『あ!じゃあ、私も走りたいです!』
七海『もちろんいいよ!真春ちゃん!じゃ、やるよ!』
一哉『またかよ…』
俺は結局2人にしたがって走った。タイムを測るために1人ずつ。
真春『え!?速…西野先輩…46秒49…櫻井先輩1分10…』
七海『はあ!?速すぎない!?』
一哉『ふう…で、真春ちゃんもやるんだよね?』
真春『はい!』
七海『嘘でしょ……一哉…48秒05…真春ちゃん…1分48』
真春『は、速い…これで全国の力…』

俺達はそのまま一緒に帰ることにした。
七海『まさか…あんなに速いとは…好一もビックリするわけだ…』
一哉『そこまでじゃないって…』
真春『星稜って遅くて何秒なんですか?』
一哉『今はわかんないけど…俺の知ってる限りでは1分20秒くらいかな』
七海『え!?うちの高校で速い方の私と玲香の普通の記録…』
一哉『ちなみに…俺が知ってる中で女子の俊足は57秒53だよ
男子の俊足は…46秒28』
2人『えーー!!!!!一哉(西野先輩)よりも速い人がいる!?』
一哉『あの2人がいまだにやってるかはわかんないけど、
女子はまだやってるらしいから…』
七海『え、えー!!ど、どんな人?』
一哉『うーん……読書好きの大人しい人』
七海『な、なにそれ…文化系なのに速いの?』
一哉『去年インターハイ2位の人だよ?戦わなかった?』
七海『………あ!!!あの人!?髪の長い…』
一哉『あ、多分その人であってるよ』
七海『名前は確か………堀…』
一哉『里奈』
七海『そう!堀里奈!!あの人知り合いなんだ…』
真春『(ハイレベルな会話過ぎてついていけない…)』
一哉『男子の名前は清水雄介』
七海『その人は何位?…一哉は?』
一哉『同じく2位…俺はインターハイ当日怪我で欠場したんだよね』
真春『2位が2人…西野先輩も出れてれば2.3.位…』
七海『私今になって合宿怖くなってきた…』
一哉『まあ、そー言わず……あいつらも楽しみにしてるって言ってたし…』
🎶♪🎶~♪🎶♪🎶♪
そこで俺のスマホが鳴った。
七海『あ…この曲…』
一哉『あ、ごめん……噂をすれば…』

TEL
里奈『もしもし?ごめんね…今大丈夫?』
一哉『うん…大丈夫だよ』
里奈『先生がね?合宿場所は学校でいいか…だって』
一哉『あー、いいんじゃない?』
里奈『あ、ほんと?じゃあ、そうするね…今部活?』
一哉『いや、終わって帰ってるとこ…丁度里奈の話してたとこ』
里奈『は?なにそれ…』
一哉『インターハイ2位の実力者の名前を聞かれたから答えたの』
里奈『あーなるほど』
一哉『あ、ちなみに聞いてる本人は4位だよ』
里奈『え、もしかして…櫻井七海さん?』
一哉『え、なんで知ってるの?』
里奈『そりゃ、ライバルになる人達の名前ぐらい知ってるよ』
一哉『その人達と合宿行くから…楽しみにしてて』
里奈『わかった…じゃ宿舎の件はよろしくね』
俺はそう言いながら電話を切った。

七海『一哉、めっちゃ嬉しそうだし楽しそうに話してたね』
一哉『え、そう?懐かしいからかな』
真春『好きなんですか?…その里奈さんのこと』
一哉『違うよ…それに里奈は雄介と付き合ってるね』
真春『え!?2位カップル!?』
一哉『そういうことになるけど…』
七海『すごいな…私も負けてられない…』
真春『ですね…体力ないなんて論外って言われてしまいそう…』
一哉『よし…頑張ろう。真春ちゃん、明日もしっかりやるよ?』
真春『は、はい!お願いします!…あの…1ついいですか?』
一哉『ん?』
真春『先輩達のなかで2人だけ私に『ちゃん』付けするんですけど…呼び捨てにしてください…』
一哉『あ、そうだっけ?』
七海『確かにちゃん付けちゃうね…』
一哉『まあ…じゃあ…真春で』
七海『そ、そうだね…』
真春『ありがとうございます!!じゃあ、私はここで!』
七海『え!真春ちゃ…真春もここなの!?私もなんだ~!』
真春『本当ですか!?偶然ですね!…西野先輩!お疲れ様でした!』
一哉『おう、真春、七海…じゃあね。』
俺は2人とわかれた。

俺は耳にイヤホンをつけて音楽を聞き始めた。
『(いつもの夏と違うんだ…か……俺も…今年の夏は
いつもと違うんだよな…別の意味で…)』
今年の夏は…転校して…友達増えて…でも…。
音楽をスキップして次の曲を聞く。
『(君は君らしく生きて行け…か……俺は自分らしく生きていけってあいつに言ったのに……なんであいつは…)』
俺は…先ほど1つ小さな嘘をついた。
里奈と雄介が付き合っていると…。
確かに付き合っていた…だけど…実際は……。

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